年収1,200万円の71歳夫と別居18年…「離婚」より「死別」を待つ“69歳・熟年妻”の恐ろしくも賢い決断【行政書士が解説】
夫婦が別れるシチュエーションは離婚、もしくは死別の2つでしょう。もし熟年夫婦が離婚を検討する際、恐ろしいことですが、現実的な問題として「死別」のケースを考えてみると、意外な事実がわかるかもしれません。本記事では丸山さん(仮名)の事例とともに、行政書士の露木幸彦氏が熟年夫婦の離婚と死別を比較、検討していきます。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
恐ろしい…妻にとって「離婚」より「死別」が有利なワケ
誰しも結婚するのは好き好んだ相手です。しかし、最初の印象をずっと持ち続けることは難しいのが現実です。もし、声も聞きたくない、顔も見たくない、同じ空気も吸いたくないほど嫌いで嫌いで仕方なくなってしまったら……。残念ながら、離婚を視野に入れざるを得ないでしょう。 ところで年齢を重ねれば重ねるほど、結婚が長くなればなるほど、そして財産が増えれば増えるほど離婚するのは難しくなります。以下は同居期間別の離婚件数です(令和2年、厚生労働省の人口動態統計特殊報告。全体の件数は19万3,251件)。 0~5年未満:5万8,839件 5~10年未満:3万6,570件 10~15年未満:2万5,556件 15~20年未満:2万1,008件 20~25年未満:1万7,320件 25~30年未満:1万517件 30~35年未満:5,035件 35年以上:6,108件 このように同居期間が30年を超える夫婦が離婚するのは離婚全体の0.5%程度。離婚の件数は一気に激減することがわかります。なぜでしょうか? 答えは、人生の終わりが見えるからです。 たとえば、妻の立場では離婚(離婚届を提出して他人になる)より死別(夫が亡くなって未亡人になる)のほうが圧倒的に有利です。実際のところ、男性の平均余命は80歳で、女性は87歳と、男性のほうが短いです。(令和4年、厚生労働省の簡易生命表)。こうして離婚せず、夫が亡くなるまで待てばいいと考えるのです。 筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、今回の相談者・丸山孝さん(仮名/71歳)はそのことを知らず、離婚の話を進めようとした1人です。いったいなにがあったのでしょうか? なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また年収や財産の内容、離婚の経緯などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。