年収1,200万円の71歳夫と別居18年…「離婚」より「死別」を待つ“69歳・熟年妻”の恐ろしくも賢い決断【行政書士が解説】
子の独立とともに、家を出て行った妻
<家族構成と登場人物の属性(すべて仮名、年齢は現在)> 夫:丸山孝(仮名/71歳)、会社経営者(年収1,200万円) ※今回の相談者 預貯金 1,260万円 退職金(小規模企業共済) 1,450万円 実家の相続財産 5,000万円 妻:丸山和子(仮名/69歳)、専業主婦 財産不明 子:丸山拓弥(仮名/37歳)、会社員 「当時はまだ若くてなにもわかっていませんでした」と孝さんが振り返りますが、妻とお見合い結婚したのは26歳のときでした。 初めて会ったとき、「はい」「うん」「そうですね」と上手に合槌を打ってくれる妻に惚れたそう。妻はいわゆる三歩下がって歩くタイプ。亭主を立てる謙虚で健気な性格でした。 しかし、いざ結婚すると長所が短所に思えてきたそう。妻は自分から話しかけてくることがほとんどないのです。孝さんが話しかけても、ありふれた返事しかせず、孝さんが仕切らないと会話が続かないのです。「つまらない女ですよ」と嘆きます。 それでも子ども(長男)が産まれたら変わると期待していたのですが、実際にはなにも変わりませんでした。結局、長男のこと以外でコミュニケーションはなく、長男を寝かしつけると、お互いに別々の部屋で過ごす日々。長男のために父、母としての役割はまっとうするけれど、すでに夫と妻としての役割はなくなっており、長男が産まれてから夫婦の営みはありませんでした。 そんなふうに仮面夫婦を続けていたのですが、長男が結婚し、部屋を借り、自宅を出ることに。ほどなくして妻も部屋を借り、荷物を持ち、1人で出て行ってしまったのです。孝さんが53歳のときのことでした。
別居から18年、ついに離婚を決意した夫
そして別居が18年経過。籍だけは入っていますが、ほとんど連絡せず、妻のことを思い出すのは妻の口座に生活費として15万円を振り込むだけ。およそ夫婦とは言えない生活に孝さんも愛想が尽き、我慢の限界に達し、いよいよ離婚を決めたのです。 孝さんが筆者の事務所へ相談しに来たのはお金の条件を決めるためでした。そして孝さんと打ち合わせの末、3つの条件を決めました。 離婚の3つの条件 1.妻の生活費総額1,980万円 そして孝さんは「いまの生活を保証するからいいだろ?」と妻に離婚を迫ったのですが、第一に生活費として毎月15万円。現在、妻は69歳ですが、80歳まで支払うと1,980万円に達します。 2.年金分割 第二に年金です。婚姻期間中、納めた厚生年金を夫婦で按分することを年金分割といいます。年金事務所に試算を申請したところ、妻の年金は毎月3万円、増えるという試算でした。80歳までのあいだ、妻の年金は合計で396万円も増えます。そのため、年金分割の手続に協力することを合わせて提案しました。 3.家の売却費用 第三に自宅ですが、別居10年目に夫婦が住んでいた戸建て住宅を1,260万円で売却。売却金を渡すことを提案しました。