訪日客人気 神保町の古本屋でファッション誌が売れているワケ
一般客にも広がる日本のファッション誌人気
「マグニフ」で1990年代のストリート系メンズファッション誌の人気が高くなったのは、2012~13年頃。古着やハイテクスニーカーなどを提案して1990年代のストリートファッションをけん引した雑誌「ブーン(Boon)」や、「グッドイナフ(GOOD ENOUGH)」「ア ベイシング エイプ(R)︎(A BATHING APE(R)︎)などの裏原系ブランドを多く扱った「アサヤン(asayan)」が売れるようになった。裏原系からの影響を公言するヴァージル・アブローが2018年にルイ・ヴィトンのクリエイティブディレクターに就任したことなどを背景に、1990年代の日本のストリートファッションに対する注目度が2010年代中盤から世界的に高まっていたが、2010年代にこういった日本のファッション誌からデザインやブランディングの着想を得た海外のストリートブランドは少なくなかったと思われる。 コロナ禍が明けてからは、ファッション業界人だけではなく、海外からの一般客も日本のファッション雑誌を求めるようになっていった。特に、2013年にリニューアルした「ポパイ(POPEYE)」は韓国、中国、香港、台湾などのアジア圏からの客に人気があるそうだ。中武氏によると、韓国人は2013年から「ポパイ」が新たに打ち出した「シティボーイ」スタイルを好む傾向があり、今もブレザーにベースボールキャップという装いでマグニフに来店する客が多いという。「ポパイ」はそういったアジアの国々でも販売されていることもあるが、彼らには日本の書店で探して買いたい、という思いがあるのかもしれない。 1990年代以前の「ポパイ」の人気も高い。マグニフの店内に飾ってある、イラストレーター穂積和夫が手掛けた「ポパイ」のポスターは非売品だが、アジア圏からの客に「売ってくれないか」と持ちかけられることがよくあると、中武さんは話す。「ポパイ」の人気はアジア圏だけにとどまらなくなっており、欧米人も1970年代、1980年代の「ポパイ」を求めるようになっているという。 中武氏によると、最近は日本の雑誌についてマニアックな知識を持ったインバウンド客が多くなっており、光琳社出版の「ジャップ(JAP)」のような、あまり数が出ておらず、尖った内容の雑誌を狙って買いに来ているという。カリスマ的な人気を誇る編集者、林文浩が手掛けていた1993年創刊の「デューン(DUNE)」は、ここ数年でかなり高騰しているそうだ。他にも、デザイン性の高さが老若男女に評価されている資生堂の「花椿」や、「ポパイ」の増刊号として始まった女性誌「オリーブ(Olive)」も長年人気を保ち続けているという。 「マグニフ」で売れるファッション誌の傾向を尋ねると、1980年代や1990年代など、この年代だから売れる、というような特徴はないが、ニューウェーブの香りがするものは、長年売れ続けているとのこと。 海外の雑誌では、イタリア版の「ヴォーグ(VOGUE)」はかなり売れており、特に1990年代のものは写真がスタイリッシュだったり、内容が実験的だったりするので、中国をはじめとしたアジア圏からのインバウンド客がこぞって購入するという。