やっぱり凄い!16歳・久保建英のルヴァン杯史上最年少ゴールの背景に何が?
相手ゴールを陥れるためのシナリオを一瞬にして描き直した。パスを直接もらうのではなく、3人目として受けることで相手の守備網をくぐり抜ける。16歳のJリーガーを突き動かした閃きが、歴史的な瞬間を生み出した。 ホームの味の素スタジアムにJ2のアルビレックス新潟を迎えた、14日のYBCルヴァンカップ予選リーグ第2節。両チームともに無得点で迎えた後半31分にFC東京の久保建英が待望のプロ初ゴールを叩き込んだ。 アルビレックス陣内の左サイドで、ボランチの高萩洋次郎が横パスを受けた瞬間だった。MF大森晃太郎に代わり、6分前に右サイドハーフとして投入されていた久保が素早く左へスライド。左手で手招きしながら、自らの存在を高萩に認識させた。 「あそこで(高萩は)前を向く、と思っていたので、自分も(パスの)選択肢のひとつとしてありましたけど。結果的にひとつ前にボールが入って、ディフェンスの注意をそらしてもらったので感謝しています」 前を向いた高萩が選択したのは、右斜め前にいた久保ではなく、前方のペナルティーアーク付近にいたFWディエゴ・オリヴェイラへのグラウンダーの縦パスだった。直後に久保は首を右へ振って、オリヴェイラが置かれた状況を確認している。 相手選手を背負ってはいたが、フィジカルが強く、ポストプレーにも長けた27歳のブラジル人ストライカーならば、確実にボールを落としてくれると瞬時に判断した。 振り返ってみれば、途中出場した今月2日のベガルタ仙台との明治安田生命J1リーグ第2節後に、シュートを放てなかった久保はこんな言葉を残していた。 「もっとパスをもらえるポジションを、ディエゴ選手の動きのいい部分を見ながら、取り入れていければいいかなと思っています」 シナリオを描き直しながら、前方へスプリントを駆けた。ベガルタ戦後の練習でオリヴェイラのプレースタイルをしっかりと頭に叩き込んでいたからこそ、ワンタッチで落とされたボールを、スピードに乗った状態で、しかも利き足の左足で受け取ることができた。 縦へ抜け出すスピードをさらに加速させ、再び左足によるツータッチ目でゴールとは逆方向の左側へ軽く蹴り出す。すべては意図された動きだった。 「0‐0だったのでどんどん前へ入っていきたかったし、監督からも『前へ入っていってほしい』と言われていたので」 あっという間に4人の相手選手を置き去りにして、最終ラインの裏へ抜け出す。やや斜め左前へ走りながら、左足を振り抜くシュート体勢に入る。インパクトの瞬間に上半身を時計回転に、しかも強く捻るフィニッシュは十八番のスタイルだった。 「自分はあの形が一番得意なので。思い切って(シュートを)打ってよかったし、これからもどんどんあの形でフィニッシュにもっていけたらと思います」 ただ一人、昨年5月に韓国で開催されたFIFA・U-20ワールドカップをともに戦った、DF原輝綺だけが久保の狙いを見抜いて必死に追走してくる。しかし、体勢を崩しながら繰り出された、捨て身のスライディングタックルも届かなかった。