やっぱり凄い!16歳・久保建英のルヴァン杯史上最年少ゴールの背景に何が?
左足から放たれた強烈な弾道はペナルティーエリア内を対角線上に切り裂き、ゴールネットの右側に突き刺さった。昨年11月1日にプロになってから、数えて7度目の公式戦で決めた初ゴール。ヒーローは雄叫びをあげながら、ファンやサポーターが狂喜乱舞するゴール裏のスタンドへ駆けていった。 「嬉しかったのと、いろいろな方の期待に応えられてよかったというのと半々くらいですね」 オリヴェイラをはじめとする仲間たちに次々と抱擁された、記念すべき瞬間の思いをこう説明した久保は、ゴール裏から自軍のベンチ裏へと移動。リザーブの選手たちと喜びを分かち合い、最後に今シーズンから指揮を執る長谷川健太監督と力強く抱き合った。 「監督がいままで自分に期待して使ってくれたので、応えられて本当によかった。チームの力になれて非常に嬉しいです」 浦和レッズとの開幕戦を1‐1で引き分けた後は、ベガルタとの第2節、横浜F・マリノスとのYBCルヴァンカップ予選リーグ初戦、ジュビロ磐田との第3節をすべて完封負けで落としていた。 久保の一発を守り切り、ようやく手にした新天地での初白星。ガンバ大阪で一時代を築いた名将は、FW永井謙佑と同時にピッチへ送り出した愛弟子の活躍に思わず表情をゆるめた。 「あの状況で出てきて、しっかりとゴールの枠に飛ばせて、ゴールを取れるあたりは大した選手だと思います。いいアクセントになり、狙い通りの得点でしたけど、まだまだ足りないところがあるので、それらを試合やトレーニングで身につけて、ひと回りもふた回りも大きな選手になっていってほしい」 プロとして初めて迎える開幕へ、久保は「自分がボールを受けてからのドリブルやシュートを、いろいろな人に見てほしい。自分自身、やっていて楽しいので」と抱負を語っていた。 しかし、実際に出場機会を増やしながら結果を残せず、FC東京自体もリーグ戦で17位と出遅れる苦境に、こんな言葉を漏らすようになっていた。 「ある程度やれていても、結局、最後のところで決め切れていないのがいまの自分。非常に痛いし、力不足を感じている。少しでもチームの勝利に貢献できる選手になりたい」 胸中に募らせてきた責任感を、最高の形で具現化した。高萩が前を向いてからゴールネットを揺らすまでの約5秒間に、二手、三手先を読む洞察力、柔らかいボールタッチ、そして左足に宿らせた高度な決定力を融合させたメモリアル弾は過去のものとばかりに、中3日で迎える湘南ベルマーレとの第4節へ向けて久保は表情を引き締めた。 「プロの世界でやっているのであれば、勝たないと意味がないので。自分だけじゃなくて全選手が勝ちにこだわっていると思うので、そこだけは見失わないようにしていきたい」 前身のヤマザキナビスコカップ時代に、FW森本貴幸(当時東京ヴェルディ、現アビスパ福岡)が16歳10ヶ月12日の最年少ゴールを記録してから13年。くしくも同じ舞台の味の素スタジアムで、16歳9ヶ月10日のカップ戦での新たな記録がFCバルセロナに見初められた逸材によって打ち立てられた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)