ふるさと納税が200万円→34億円に…「第2の夕張」と呼ばれた金欠の町を元フリーターのヨソ者が復活させるまで
■香川のゆるキャラから学んだ「ゆるキャラのあるべき姿」 イベント出演にも慣れ始めた2013年6月、守時さんとしんじょう君にとって大きな出会いがあった。 香川県高松市で行われたゆるキャライベントに招かれた時だった。中四国から多くのゆるキャラが集まるなか、ひと際人だかりができていたのが香川県のキャラクター「うどん脳」だった。さすが地元だなと感心していたら、休憩室で一緒になったうどん脳が「東京からファンが来てくれたんだ」と言うではないか。 守時さんは純粋に「え、すげぇ!」と思った。 2011年に誕生したうどん脳は、2012年のゆるキャラグランプリは172位。全国的な知名度は高いとは言えない。しかし、わざわざ東京から高松までファンを呼び寄せる力を持っていた。 「本当にびっくりしました。ファンってなに? どういうこと? って。ゆるキャラの可能性を改めて感じましたし、今から追いつけるのか不安にもなりましたね」 ランキングが上位でなくても人気のあるキャラクターがいる。ファンを大切にする重要性を実感した守時さんとしんじょう君は、ファンに愛されるゆるキャラを目指すことを決意する。 ■「発信したいこと」ではなく「喜んでもらえること」を届ける それからのしんじょう君は「ファンに喜んでもらうこと」が一番の目標になった。これまでは須崎市のイベント情報などをつぶやくことなどがメインだったが、方針を転換し、クスッと笑えるネタを発信することにした。ある日は砂浜に埋まってみたり、ある日はプールで泳いでみたりと、おそらくゆるキャラ初の取り組みに幾度となく挑戦した。 イベントに出ても「ふざけ倒す姿勢」は変わらない。ただ黙ってステージに立っているだけの時もあれば、守時さんとコントをしてみた時もあった。 「ゆるキャラは地域をPRする存在ですが、『来てね』『買ってね』ばかりの一方的な発信はファンファーストではないですよね。こちらが発信したい情報ではなく、お客さんが見たいと思うコンテンツを届けたいと思ったんです」 ファンを楽しませることに徹したしんじょう君の人気は拡大し、2014年には須崎市の人口を上回るSNSフォロワー数を獲得。同年9月には「ご当地キャラ祭りin須崎」を開催して約5万人の観光客を呼び込んだ。ちなみにこのイベントはその後も続き、2019年には9万5000人の来場者数を記録。よさこい祭りに次ぐ高知の一大イベントとなっている。 そして誕生から4年目の2016年に、ついにゆるキャラグランプリ1位に輝いた。海外のイベントからも出演オファーが頻繁にあり、翌2017年の正月には世界各地から5000通もの年賀状が届いた。 守時さんもしんじょう君の横にいつもいる“おにいさん”としてファンに知られるようになった。公務員らしからぬ見た目や雰囲気から「超公務員」とあだ名が付き、他のキャラクターやファンからもイジられる存在となっていた。