北海道で“映画と美食の祭典”が立ち上がった背景。大泉洋ら所属事務所が新たなチャレンジに挑む
ただ、コロナ禍の中でもいろいろな人たちにこういうことをやりたいという構想は言い続けていました。10年間で3本の映画をプロデュースして、生産者の方々やシェフ、そして映像関係者など多くの人たちと出会うことができました。 北海道には素晴らしい食材があって、素晴らしい生産者がいる。映像という要素がプラスされることによって、北海道の食をより身近に感じて、それを次の世代につないでいく可能性につながる。それが北海道で映画祭をやる意味なのではないかと思いました。
映画に詳しくなくても楽しめる映画祭にしたいという気持ちもありました。サン・セバスティアン映画祭で体験した、作品を観た後にみんなでバルに行って、「どこの国から来たの?」「何の映画を見たの?」とか、「あれよかったよね」と、一緒に食事を楽しみながら、おいしいね、とみんなで乾杯しあえる、食の映画祭ならではの楽しみ方を提案したいと思っています」 食に対する市民の意識が非常に高いサン・セバスティアンでは、一般の男性が「美食倶楽部」と呼ばれる料理サークルで料理を探求する伝統的な美食文化があったり、食を使って観光振興を行ったり、食について教える大学があったりと、街をあげて食を盛り上げようとする機運があるという。
「北海道の函館に、日本におけるバスク料理の第一人者である『レストランバスク』の深谷(宏治)シェフという方がいらっしゃって。サン・セバスティアンで修業をされていたときに地元の人たちが地元の食材を使うことに誇りを持っているということを目の当たりにして、故郷の函館に帰ってきてから、地元のものを使って本場の味を提供しているスペイン料理の先駆者です。 サン・セバスティアンは、食の街にしようという意識が高いですが、深谷シェフはスペインでのご経験から、その土地ならではのレストランが日本全体の食レベルを高めると考え『バル街』や『世界料理学会』開催などに尽力するなど、函館のみならず日本の料理界振興のために活動されています」