北海道で“映画と美食の祭典”が立ち上がった背景。大泉洋ら所属事務所が新たなチャレンジに挑む
「2012年に『しあわせのパン』という映画を公開したのですが、その初日に、映画館のまわりのベーカリーで、パンがものすごく売れたという報(しら)せを聞きまして。やはりパンの映画を観たらパンが食べたくなるんだなと思い、そのときに映像と食をつなげられないかと思ったのがきっかけです。 もともと『しあわせのパン』を企画した段階で、北海道が誇る食であるパン、ワイン、チーズを題材にした作品をシリーズで展開したい、そして三部作を撮ったら映画祭を立ち上げたいという構想はそのときからありました。私自身、いくつかの世界の映画祭に訪れたこともありますが、スペインのサン・セバスティアン映画祭で、カリナリー部門という、食と映画をつなげた、すてきな取り組みを行っていることを知りました」
サン・セバスティアン映画祭の目玉企画となるカリナリー部門は、世界各国の食をテーマにした作品を上映し、上映後にその作品に関連するフルコース料理が提供されるという、サン・セバスティアン映画祭屈指の人気部門だ。 ■サン・セバスティアン映画祭で見た光景 「サン・セバスティアンはバル街がある食の街。ミシュランの星を獲得しているお店がたくさんあり世界屈指の美食の都と呼ばれていますが、もしかしたら北海道がサン・セバスティアンに匹敵する場所になるのではと思ったのです。
それはなんといっても食材の素晴らしさですよね。海のものもあるし、山のものもある。だから、北海道でこそ食の映画祭をやるべきだと思い、いつかサン・セバスティアン映画祭に行ってみたいと思うようになりました。 ですが毎年選ばれるのは10作品だけ。毎作品エントリーして、3本目となる2019年の『そらのレストラン』のときにディナー付きプレミア上映作品に選出されることとなりました」 「映画祭で映画を観たあとバル街に行ったり、その作品をイメージしたおいしいディナーを食べながら映画の話や食の話をしたりと、参加者が国境を越えて、言語を越えて楽しそうにコミュニケーションしているのです。実際に体験をしてみて、これは絶対に日本で、北海道で開催すべきだと意気揚々と帰国したのですが、その翌年新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行となってしまいました。