日本独自の成長を遂げた“紅茶市場” 40周年『リプトン』がもたらした「気軽に屋外で紅茶を飲む」という革命
1984年に発売され、今年40周年を迎えた『リプトン』チルド紙パックのレモンティーとミルクティー。それまで紅茶といえば、英国式の紅茶イメージが大半を占めていた国内では、茶葉から淹れて飲むのが一般的だった。「気軽に屋外で紅茶を飲む」という新たなTPOとして風穴を開けたのが、同社が提供した紙パックによる“チルド紅茶”だった。その後の『午後の紅茶』をはじめとしたペットボトル紅茶飲料と一緒に紅茶市場を盛り上げた同商品は、いかにして国内の紅茶市場にニュースタンダードをもたらしたのか? 同商品を製造・販売する森永乳業の担当者に聞いた。 【貴重写真】パッケージに人が…!『リプトン ミルクティー』1984年発売当初のパッケージ
■コンビニの台頭により売上も伸長、「青春の味」として中高校生の定番アイテムにも
1980年代初頭、缶入りの烏龍茶や緑茶が各メーカーから発売され、お茶が茶葉からRTD(Ready to drink/開けてすぐ飲める飲料)へと変わる転換期を迎えていた。そんな最中の1984年、リプトンは「紙パックシリーズ」の定番商品として『リプトン レモンティー』を発売。紅茶カテゴリーでは、これがRTD商品のパイオニアとなった。 「当時、紅茶と言えば、茶葉から入れて飲むのが定番のイメージでした。その紅茶をいつでも気軽に楽しんでいただきたい、紅茶の飲料文化を広げたいとの思いから、RTDを発売しました」(森永乳業 マーケティング統括部 濱口雅史さん/以下同) 発売当初、紙パックは200mlのサイズだったが、その後、1985年に『レモンティー』の大容量(約1000ml)、1988年に中容量(約500ml)が登場。そして1989年より『ミルクティー』の1000ml、500mlもラインナップに加わった。だが、「発売当初からすごく売れていたわけではなく、少し紆余曲折があった」そうで、ラインナップを広げていく中で、少しずつリニューアルを行ってきた。「当初は紅茶党や果汁飲料に飽き足らない主婦層をターゲットにしていましたが、1988年のリニューアルのタイミングで、より若者層にターゲットを広げて『自分の時間をカラフルに彩るための商品』という打ち出し方をしました」 たとえば、後発ながらも大ヒットを記録した『午後の紅茶』では、アフタヌーンティーを広めたとされるアンナ・マリア公爵夫人が商品パッケージに描かれ、格式の高さが表現されている。対してリプトンチルド紙パックは「紅茶をもっと気軽に手軽に楽しめるように」との思いから、今にも飲みたくなるような”シズル感”や”みずみずしさ”を重視。風味の本格感を強調しながらも、紅茶飲用に馴染みの薄い人でも「おいしそう」と感じられるようなデザインに変更した。その後、若年層への広がりとともに、レモンティー(黄)、ミルクティー(青)など、若年層が手に取りたくなるようなカラフルな色使い、季節に合わせたイラストのデザイン、コラボ限定デザインなども発売された。さらに1980年代から2000年代にかけてコンビニエンスストアの店舗数が急激に拡大したことも、チルド紅茶にとっては追い風となったようだ。 2000年代に入ると、マスカット、ライチ、オレンジ、ストロベリーなど彩り鮮やかなシリーズも続々登場。いまやすっかり定番となった多様な“フレーバーティー”にも先んじて取り組んできた。こうした展開は「リプトン」チルド紙パックが若年層にターゲティングを行い、”高校生の定番アイテム”と言われる所以でもある。 「高校生に受けた理由としては、当時500mlという比較的大容量で100円とコスパも良く、手に取りやすかったこと。教室の机に置きやすい形状だったこと。また飲み口を開いてストローを差したあと、飲み口を閉じてストローを固定させるという飲み方も当時新しかった。あれは弊社から訴求したのではなく、自然発生的に広がったと思います。さらに味の支持も大きいです。あの特有の甘さのある味わいは唯一無二で、『この味じゃないとダメ』というお声をいただきます」 2001年には、シールを集めて応募すると携帯電話のストラップが当たるキャンペーンも行われ、これが当時の高校生に受けて大ヒットした。そうしたキャンペーンも含めて、「リプトン ミルクティー」をはじめとした紙パック紅茶シリーズは高校生との親和性が極めて高い商品だったと言える。 「今も『高校生の頃から飲んでいます』『青春の思い出です』といったお声をたくさんいただきます。私も世代だったのですが、当時クラスほとんどがリプトンを飲んでいる光景が本当にあったので…たくさんの方々に商品を愛していただいていた。毎朝買ってから学校に行く、授業中でも机の角っこに必ず置いてある、放課後に皆で話している時に飲むなど、皆様の思い出のシーンの中に入り込んでいるというのは、商品として非常に幸せなことだと思います」