【中学受験2025】最難関校はチャレンジ層が減少、大学附属校の志望者増加…SAPIX
大切なのは基礎学力、そして「考える力」
--昨年度の入試問題で見られた傾向を踏まえつつ、今年度考えられる出題についてお聞かせください。
学校の入学試験の目的はおもに2つあります。1つは、小学校の学習指導要領に基づいた基礎的な内容が身に付いているかどうかを確認することです。もう1つは、中学校に入学した後、その学校の授業についていけるかどうかを見極めること。授業で多くの記述を求める学校では、入試でも記述問題が多く出されるなど、学校が求める学力や教育方針が反映された問題が出題される傾向があります。過去問をしっかり学び、入試を突破することこそが、その学校の授業内容を理解し入学後に順応できるかどうかの1つの指標となります。
さらに、学校は受験塾での知識や解法を習得するための学習だけではなく、社会とのつながりや現代的な問題に目を向ける姿勢をますます重視しています。2024年度の開成ではAIによる文章の誤りを指摘する問題が、昭和学院秀英ではAI生成の画像について考察する問題が出されました。こうした問題は、AIやテクノロジーについての理解だけでなく、現代社会の出来事に関心を持ち、学校や家庭での学びを深めているかどうかが問われているのです。入試問題は時代のトピックが敏感に反映されますから、今年のパリオリンピックや衆議院選挙、大雨や地震などの自然災害に関する出題もみられるでしょう。また、最近の国語の入試問題では、昔の名作ではなく、ここ数年に書かれた文章を出題する学校が増えています。現代の作家がどのようなテーマに取り組んでいるか、格差社会であったりジェンダーであったり今を生きる子供たちに伝えたい問題意識を反映した問題が増えています。
ただ、こうして記述力や思考力という言葉がさかんにいわれてはいるものの、中学入試を通じて問われる力は今も昔も変わっていません。まず重要なのは塾や学校でよく出てくるようなオーソドックスな問題をしっかり解き、基本的な得点を取ること。そして、その基礎を応用した問題で差をつけることが狙いとなります。さらにそのうえで、ときには見慣れない問題や、考える力を問う問題が出されることもあり、こうした問題によって子供たちの能力や独自の思考力が試されるのです。長年にわたって入試問題を見続けていますが、毎年そういった問題を見ると本当に奥が深いと思わされます。