障害者マーケットは日本のビジネスチャンスだ 世界では18.5億人、13兆ドルの市場が眠っている
高齢者と障害者を一括りにしてよいのか、という疑問もあるでしょう。たしかに、年を重ねたからといって、すべての人の身体が不自由になるわけではありません。 しかし、高齢者と障害者では、必要なサポートや配慮、利用しやすい施設など重なる部分が多くあります。たとえば、聴力が低下した高齢者には、口の動きがわかるように正面から、はっきり話すと伝わりやすく、時には筆談が有効な場面もあります。これは聴覚障害者にも共通する対応です。また、転倒防止の手すりや段差解消のスロープは、筋力が低下した高齢者はもちろん、肢体不自由者にも同じように役立ちます。
むしろ高齢者は、不自由さのバリエーションという点で障害者を大きく上回ります。たとえば、私は歩くことはできませんが、見ることや聴くことは十分にできています。でも、この先、40年、50年と年を重ねれば、視力・聴力・筋力などの身体機能はだんだんと低下して、認知機能も衰えていくでしょう。 このように、さまざまな不自由さを同時に感じているのが高齢者で、高齢者のニーズは障害者のそれを統合した状態にあります。だから、高齢者へ配慮したサービスや商品は障害者への配慮にもつながり、その逆もまたしかりなのです。
■世界では18.5億人、13兆ドルの市場がある 高齢者や障害者を対象とするマーケットは拡大の一途をたどっています。何しろ、先が見通せない時代といわれる中にあって、日本における高齢化と人口減少ほど確実な近未来はないからです。 言い換えれば、総人口が減り、高齢化に伴って世帯当たりの消費額も減少する環境下で、これまでと同じことを続けていては先細りを避けられません。そこで、マーケットの変化に合わせ、高齢者を対象とした市場開拓を行う企業が増えています。
たとえば、かつては20代以下の若年層を主な顧客としていたコンビニエンスストアのメインターゲットは、50代以上にシフトしました。それに伴い、シニア向けに品揃えや陳列方法を見直し、食事配達や買い物支援のサービスを拡充する動きが目立ちます。また、結婚や子どもの誕生をきっかけに、死亡保険金が一定の期間手厚くなるタイプに加入するケースが多かった生命保険市場では、長寿を視野に入れた商品が好調なようです。 高齢者市場が注目されているのは、数だけが理由ではありません。消費に対するスタンスそのものが若い世代とは異なり、消費離れが指摘される20代、30代を尻目に、中高年の消費意欲は相変わらず旺盛です。子どもの頃に高度経済成長を体験し、若いときにバブル経済を経験した現在の50代、60代は、経済状況が仮に少々厳しくても、趣味や普段の食事、国内旅行といった、日常の延長線上でささやかな贅沢を楽しもうとする意識が高いとされます。