障害者マーケットは日本のビジネスチャンスだ 世界では18.5億人、13兆ドルの市場が眠っている
どんな世代にも経済的に厳しい方はいて、そうした方々に寄り添い、支援しなければならないのは言うまでもありません。しかし、消費支出全体に占める高齢者の消費割合が、高齢化率を上回るペースで伸びているのは紛れもない事実です。 さらに言えば、高齢化は日本に限った事象ではありません。中国やインドも着実に高齢化への道を突き進んでいて、最後の人口爆発の地と呼ばれるアフリカですら、いずれは少子化が進むと予想されています。
それほど先を見通さずとも、現時点で18億5000万人の障害者が世界中で暮らしており、障害者とその家族や友人を合わせた購買力の総額は13兆ドルに達するとされています。控え目に見ても、障害者と高齢者のマーケットは世界規模の可能性を秘めています。 ■95%の企業はまだ取り組んでいない マーケットの可能性を認識し、取り組み始めている企業はまだ多くありません。さまざまな人にとって使いやすいインクルーシブな製品やサービスを提供している企業の割合は、世界でもわずか5%程度とされています。裏を返せば、障害者や高齢者、そして将来そうなるかもしれない方々をターゲットとする市場は、競争相手の少ないブルーオーシャンといえます。
この市場の価値を十分に理解している代表的な企業としてアップルが挙げられます。iPhoneにスクリーンリーダーの機能(VoiceOver)があるのをご存じでしょうか。電子書籍やネットニュース、企業の公式サイトなど、画面に映し出されている文章を音声で読み上げる、視覚障害者に必要な機能です。同様のアプリケーションソフトは他にもありますが、最初からOSに組み込まれている点にアップルの意識の高さを感じます。
このVoiceOverを開発したチームメンバーの一人に、視覚障害者のディーン・ハドソンさんがいます。彼がコンピュータサイエンスを学んだ学生時代には、アップルのVoiceOverも、その他の音声読み上げソフトも、まだ存在しなかったため、画面に表示されるコードを読む介助者が不可欠でした。 それでも、エンジニアになってアップルに入社した彼は、VoiceOverをはじめとするアクセシビリティ機能の開発に携わり、さまざまな障害のある人がデバイスを利用して自立した生活を送る後押しをしています。アップルはアクセシビリティに正面から取り組むことで、優秀な人材と魅力的な市場の両方を獲得したことになります。