野生動物にとっては苦痛でしかない…「アニマルカフェ」「ふれあい動物園」の現実
がんばっている動物施設もある
田中さんは、動物福祉の調査研究のために、時間ができるとアニマルカフェやふれあい施設の実態を見に行くという。やはり問題が多い施設は多いが、中には動物福祉を考えている施設もあるという。 「沖縄のあるハリネズミカフェは通常のよくあるハリネズミカフェとは全く異なったものでした。店長さんはハリネズミが大好きで、夜行性のハリネズミの生態に合わせて、営業時間は夜10時から午前2時まで。ハリネズミが起きた時間に店を開け、営業中も店内を薄暗い照明にし、騒ぐ人もいなくて静かに営業をされていました。ハリネズミがいる箱の中には筒が用意されていて、お客さんはハリネズミに触ってもいいけれど、ハリネズミが嫌になったら筒の中に逃げるようになっています。抱っこをするときも店長がハリネズミの様子を心配して横でずっと見ているので、気になって私もすぐに手を放しました(笑)。 店長さんは、ハリネズミを飼育する人が増え、ハリネズミの生態を理解せずに飼育する人もいる中、正しくハリネズミを知ってほしいという思いでやっているとお話していました。こういった形のカフェであればいいのではないかと思いました。 最近では動物園も動物福祉を重視した展示や飼育をしているところも増えています。動物を愛でにいくのであれば、そういった施設を子どもと一緒に調べて探してみて、こんなところがよかったね、と確認し合うのもいいかもしれません。 アニマルカフェではなくて動物園ですが、長崎バイオパークのビーバーの施設はなかなかおもしろい作りをしています。そこではビーバーを放し飼いにして、ビーバーが園内を移動して自分で見つけた木を運んで巣作りをするのです。それを見て来園者は、ああビーバーってこうやってたくさん木を集めて巣作りをするんだね、と知ることができます。 野生動物にとって大事なのは、ふれ合うことよりも、彼らがどう生きていてその環境を私たち人間がどう守っていくかということです。人間本位ではなく、同じ地球に住む仲間としてどうあるべきか、子どもたちにも伝えてほしいと思うのです」
牧野 容子(エディター・ライター)