野生動物にとっては苦痛でしかない…「アニマルカフェ」「ふれあい動物園」の現実
ふれあうことよりも知ることが最初の一歩
SNSなどを見みると、アニマルカフェやふれあい動物園に行く理由に、「子どもたちが行きたいと言ったから」「子どもが珍しい動物とふれ合いたいと言ったから」などを上げる人が多い。確かに、珍しい動物にふれ合えるとなったら子どもはうれしいに違いない。でも、野生動物たちの本当の事情を知って、そういった環境が彼らにとって苦痛であることを学べば、子どもたちは見たくない、行きたくないと思うようになるだろう。そして、子どもがリクエストしなければ、親も進んでは行かなくなるだろう。 しかし、「動物福祉」という言葉に不慣れで、学校教育でも教えないことが多く、さらに街にはアニマルカフェやふれあい施設が数多く存在する日本で、どうこの問題に取り組んでいったらいいのだろうか。田中さんは、子どもがそういった施設に行きたいと言ったとき、テレビなどでそういった場所が紹介されていたときに、親子でディスカッションしてみてほしいと言う。親子で想像力を働かせて、動物の気持ちになって考える、ということを行ってみるといいという。 「動物虐待というと、暴力をふるって苦痛を与えることと思いがちですが、それだけが虐待ではありません。アニマルカフェやふれあい動物園の多くは、自然界とは異なる環境です。狭いビルの中の一室に本来は野外に生活する多くの動物たちが集められ、中にはバーや柱に鎖で固定され行動制限されているケースも少なくありません。野生動物の生息地の環境が再現されていないことは、動物たちにとっては大きな苦痛です。 例えば、その施設にいる野生動物を事前に調べて、本来はどういう環境下で育っている動物なのか、まずは親子で調べてみる。その上で、アニマルカフェやふれあい施設で、動物たちはどんな気持ちになるかを子どもと考えてみるといいかもしれません。 でも、そういう話をすると、“アニマルカフェにいたワオキツネザルは、自分から肩に乗ってきたよ。ご飯をあげようとしたらすぐに寄ってきて、虐待されているような感じは全くなかったよ”と言う方もいます。実際に友人の娘さんがそう言ったのです。私はそのときこう言いました。“それはあなたがワオキツネザルの本来の姿を知らないから。彼らは屋内の環境にいるべきではなくて外にいるべきだし、人間と触れ合うような馴化の歴史もない。本来はマダガスカルで生活していて、群れで行動しているんだよ”と。 本来の姿を知らないために、たまたま近くにいたワオキツネザルがポンと肩に乗ってくると、“かわいい!”“人懐っこい”と感じてしまう。でも、実際はアニマルカフェやふれあい施設にいる野生動物たちは黙ってじっとしていても、実はすごいストレスを感じているかもしれない。そういったリアルな姿について子どもとまずは調べて学んでみる。人間だって、初対面で自分のことを何も知らない人に触られたり、大声を出されたり、抱きしめられたらイヤですよね。動物も同じであることを子どもに伝えていくことも大人の役目だと思うのです」