「日本人から下に見られても」ミャンマー人経営者がそれでも日本で働く理由と誇り
社長は「ボボさんなら」と快諾し、2021年8月に「肉汁水餃子 餃包 池袋店」を開店することを決意しました。 ■ミャンマー式ティーショップが日本にない 新店舗の資金について、信用金庫などの金融機関に相談しましたが、担保を持たないミャンマー人には融資を受けることができませんでした。そのため、これまでの事業で得た資金に加え、所有していた車をさらに売却して捻出した自己資金で、店舗を開店させました。 ところが、開業後すぐに問題に直面します。コロナ禍でお酒の販売が制限され、飲食店にとって重要な収益源を確保できない状況となりました。その結果、瞬く間に自己資金が減り始めました。
ボボさんとテテさんは、この苦境を乗り越えるために2人でアイデアを絞り出し、日本にはミャンマーのティーショップが存在しないことに気づきました。ミャンマー国内では、日が昇る前から「ラペイエ」と呼ばれるミルクティーや、「モヒンガ」といった国民的な麺料理などを朝食として楽しむ文化が一般的です。 しかし、日本にはそのような文化を再現したお店がありませんでした。これを「チャンス」と捉えた2人は、サイドメニューとして土日のみ朝7時から営業を開始することにしました。
もともと食材店を営んでいた経験から、ミャンマーの本格的な「ラペイエ」や、ミャンマー料理特有の調味料や食材の仕入れ先を熟知しており、より本格的なミャンマー料理を提供することが可能でした。 しかも、単にミャンマー料理を提供するだけでなく、「本物の味を日本の人々にも味わってほしい」という思いを込めてとくに注力し、こだわったのが「モヒンガ」の出汁です。出汁は「モヒンガ」の魅力の核であると捉え、毎日丁寧に仕込み、抽出されるナマズの出汁(エキス)スープでした。
日本にあるミャンマー料理店の多くでは、「モヒンガ」などの料理は調理に手間がかかり、調味料も独特で、ナマズで出汁を取るなどの工程が大変です。そのため、インスタント食品や大量に作って冷凍したものを解凍して提供するのが一般的なようです。 しかし、テテさんは自ら食材を仕入れ、本格的な調味料を使用し、毎日約4時間をかけて仕込みを行い、ミャンマーで味わえるものと同じような「モヒンガ」を提供しました。 ■ようやく1000万円の融資が可能に