<連載> 今すぐできる終活講座 義父の墓じまいと義母の入院から見えてきた、「お墓」と「お金」の現実 妻の実家が大変②
意思能力がない家族の金融資産を引き出すには
妻の実家ではお墓だけでなく、脳梗塞(こうそく)で倒れた義母の入院などの費用を誰がどのように負担するのかも問題になりました。義母の入院費用は、義母自身のことなので本人の銀行預金から口座振替で支払えればよいのですが、義母は意思能力がない状態と診断されており、本人が手続きすることもできません。 ここで、認知症などで家族の意思能力がない場合に、本人の金融資産を引き出すことができる方法を整理してみます。 1.成年後見制度 (1)任意後見制度 (2)法定後見制度 ・後見 ・保佐 ・補助 2.信託 (1)商事信託(信託銀行や信託会社が営利目的で提供する信託商品) (2)民事信託(家族信託) 3.代理請求 (1)金融機関への任意代理人の届け出 (2)認知症保険(指定代理請求特約の締結) 4.一般社団法人全国銀行協会の「不測の事態における預金の払出しに関する考え方 」 成年後見制度は、意思能力の低い状態にある人の判断を本人以外が補うことにより、さまざまな契約や手続きを支援します。 信託とは、金銭や不動産を第三者に託して管理や運用をしてもらうことで、信託会社などが営利目的で行う「商事信託」と、家族など信頼できる人物が受託者になる「民事信託」があります。 また、金融機関へあらかじめ任意代理人の届け出を行うことにより、口座保持者本人の判断能力が低下した場合でも、代理人が預金の引き出しを行うことができるようになります。 保険においては、被保険者が認知症などにより保険金や給付金の請求の意思表示ができない場合、「指定代理請求特約」を結んでおくことにより、指定された代理人が被保険者本人に代わって請求を行うことができます。 そして、預金者本人に病気や事故といった不測の事態が生じた場合、本人以外の第三者に対して人道的な観点から特別に預金の払い出しを認めるかどうかについては、一般社団法人全国銀行協会が「不測の事態における預金の払出しに関する考え方」(https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/news/news340516.pdf)として指針を示しています。 上記のうち1.(2)の「法定後見制度」と4.の「不測の事態における預金の払出しに関する考え方」は、意思能力が減退したり失われたりした場合に利用できますが、法定後見制度は専門職が後見人等に選任された場合に報酬として費用がかかり続けますし、全国銀行協会のガイドラインは緊急事態用なので利用は1回きりです。 また、これら以外の方法は、意思能力がしっかりしているうちに本人が契約することが必要です。