【インタビュー】部屋と孤独と写真と。アレック・ソスとの一問一答。|青野尚子の今週末見るべきアート
2022年、日本で初めて開かれた〈神奈川県立近代美術館 葉山〉での個展に続いて、〈東京都写真美術館〉で日本の美術館では2度目となる個展を開催しているアレック・ソス。今回の個展のテーマは「部屋」だ。来日した彼に、部屋、そして写真について聞きました。 【フォトギャラリーを見る】 「アレック・ソス 部屋についての部屋」展はコロナ禍の前から5年ほどかけて準備したもの。ほぼ同じサイズの6つのスペースに初期作「Sleeping by the Mississippi」から近作の「I Know How Furiously Your Heart is Beating」などのシリーズとともに、世界初公開の新作「Advice for Young Artists」が並ぶ。「自分の作品についてしゃべるのは得意じゃない」というアレック・ソスは、ややゆっくりとした語り口で質問に答えてくれた。
――〈パークハイアット東京〉で撮影されたシリーズは、同ホテルを舞台にした『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)から着想を得たものだそうですが、この映画のどんなところに惹かれたのでしょうか。 映画ではアメリカからやってきた若い女性(スカーレット・ヨハンソン)と中年の男性(ビル・マーレイ)との交流を通して、自身も若い女性だった監督のソフィア・コッポラの視点から見た中年男性の体験が描かれている。自分も年をとって、この映画の中年男性になったような気持ちが強くなってきたんだ(笑)。僕もよく旅をしてホテルに泊まるしね。でも妻はこの映画が嫌いだという。映画ではビル・マーレイ演じるボブが日本から妻に電話をかけるシーンがあって、彼女はボブの妻に感情移入したらしい。僕が日本から家に電話をかけると、こちらは朝なのに向こうは夜で、僕たちは遠く離れている。そんな時もボブに感情移入してしまう。
――この映画もあなたの写真も孤独がテーマの一つになっています。自身が孤独を感じるようになったのはいつごろのことでしょうか。 僕は郊外というには田舎だけれど田園地帯というわけでもない、いわゆる準郊外で育った。郊外に友だちも住んでいたけれど、僕ひとりで歩いていけるような距離ではなかった。だから小さいころから大半の時間を一人で過ごしていたんだけれど、寂しいとは思わなかった。言うなれば“良質な孤独”だね。大学でも友だちはいたけれど、ひとりでいることのほうが多かった。