〈情報混乱起きた新型コロナ「レプリコンワクチン」〉非科学的なフェイク情報の原因と影響
ワクチンへの不安
レプリコンワクチンに反対する理由は3つに分類できる。1番目は昔からある根強いワクチン一般に対する不安、2番目は新たに出てきたmRNAワクチンに対する不安、3番目がさらに新しいレプリコンワクチンに対する不安である。 ワクチンに対する不安の原因はもちろん副反応である。どんなワクチンにもある副反応というデメリットと、感染防止というメリットをはかりにかけて、メリットが大きい場合だけ利用するのが原則だ。しかしそこに付きまとうのが、接種した人の実感の違いという問題である。 ほとんどのワクチンは健康な人が予防のために接種する。副反応が出た人は自身でそれを明確に認識して、被害者として声を上げる。他方、感染しなかった人は、それがワクチンのおかげなのか、接種しなくても感染しなかったのか分からない。だからワクチンの効果を確信を持って主張する人はほとんどいない。 その結果、巷に流れるのは被害者の声だけになり、ワクチン反対論が強くなる。これはすべてのワクチンに共通する問題であり、「ワクチンの悲劇」と呼んでいる。 次はmRNAワクチンへの不安だ。生物の遺伝情報を記録するDNAから、タンパク質を作る情報をコピーしたものがmRNAだ。この仕組みを利用して、スパイクタンパク質を作るmRNAを新型コロナワクチンとして実用化したのだ。 その技術開発に功績があったカリコ博士とワイスマン博士が23年のノーベル生理学・医学賞を受賞したことは記憶に新しい。ところがmRNAワクチンに対する偽情報はモデルナワクチンの接種が始まったときから流された。例えば不妊を引き起こす、ワクチン接種者が未接種者に病気を伝染させる、マイクロチップが埋め込まれていて摂取した人を追跡し管理するなどの陰謀論である。 mRNAワクチンは接種した人のDNAを変化させて恐ろしい健康被害を起こすなどのフェイク情報もあった。DNAは細胞内の核に含まれるが、mRNAワクチンは核に入ることはない。だからDNAを変化させることはないという基本的な知識が広がっていないためだろう。