〈情報混乱起きた新型コロナ「レプリコンワクチン」〉非科学的なフェイク情報の原因と影響
海外では承認していないワクチン
日本看護倫理学会は、開発国である米国や治験を行ったベトナムでレプリコンワクチンが認可されていないことは、何らかの安全上の懸念があるのではないかとも主張している。これに対してMeiji Seikaファルマ社は、豪州の企業が欧州医薬品庁に承認申請を行い、米国などでも申請の準備が進んでいると反論している。海外で承認していないのではなく、承認の競争で日本が1着になり、各国は日本を追いかけているということなのだ。 このやり取りを見て筆者は、かつての民主党政権時代に、次世代スパコン開発者の「世界一を取ることで国民に夢を与える」という説明に対して、「仕分け人」の議員が「2位じゃダメなんでしょうか?」と発言したことを思い出した。mRNAワクチンを最初に発売したファイザー社に対して世界各国から供給依頼が行われ、21年7月に菅義偉首相(当時)が同社のブーラ最高経営責任者(CEO)と会談し、ワクチンの安定的な供給を依頼している。1位の企業は人々の健康維持に大きな貢献をするとともに、大きな収益を上げることが出来たのだ。 当時の日本では、なぜ国産ワクチンが開発されないのかが大きな問題になった。ところがレプリコンワクチンでやっと日本が1位になると、今度は2番目がいいという。目先のリスクを回避することしか念頭になくなるのが人間の本能だが、少なくとも学会は大所高所からの論理的な判断をすべきではなかったのだろうか。
ワクチンのメリットとデメリット
新型コロナワクチンの効果について厚労省は、2023/24シーズンで用いられたオミクロン株対応1価ワクチン(XBB.1系統)は入院を約40~70%程度予防したと述べている。その詳細は、国内では60 歳以上の入院予防効果が44.7%。海外では60歳以上の入院予防効果が70.7%、集中治療室ICU入室予防効果が 73.3%。18歳以上の入院予防効果が62%、救急受診予防効果が58%などである。 他方、新型コロナワクチンの副反応について厚労省は21年2月から24年6月10日までの3年4カ月の認定件数を7458件、死亡認定を618件と発表している 。これに比べて、新型コロナワクチン接種が始まる前の1977年から22年の46年間の認定者数は3522人、死亡認定は151人である。摂種した人数が分からないので、1977年から22年の副反応の確率は分からない。 新型コロナワクチンの接種者は、4回の接種が行われた23年4月の時点で4億3619万3341人だった 。この数字から計算すると、副作用が起こる割合は100万人当たり17人、死亡者は100万人当たり1.4人になる。インフルエンザワクチンによる副反応は100万人当たり4.9人、重篤報告は1.6人なので 、新型コロナワクチンの副反応の確率は確かにインフルエンザワクチンより高い。レプリコンワクチンの副反応情報はまだないが、従来のmRNAワクチンと同様の数字になるのではないかと考えられる。