〈情報混乱起きた新型コロナ「レプリコンワクチン」〉非科学的なフェイク情報の原因と影響
レプリコンワクチンのシェディング
次はレプリコンワクチンに対する不安だ。これはmRNAワクチンの一種なので、mRNAワクチンと同様の荒唐無稽なフェイク情報が広がっている。他方、レプリコンワクチンだけのフェイク情報としてもっとも広く信じられているのは「シェディング」である。日本看護倫理学会の緊急声明は『レプリコンワクチンが「自己複製するmRNA」であるために、レプリコンワクチン自体が接種者から非接種者に感染(シェディング)するのではないかとの懸念があります』と述べている。 7月5日の武見敬三厚労相(当時)の会見で、一人の記者が日本看護倫理学会と同じ質問をした 。この記者はフェイク情報に精通しているようで、それらをまとめて、「ワクチン接種者の細胞内でmRNAが増殖してスパイクタンパク質を生成し、それらがエクソゾームという小さな袋に入って細胞から放出され、呼気を経由して他人に感染するシェディングという現象が起こるのではないかという懸念がSNS上などで多く見られる」として、見解を求めた。武見氏は、「シェディングという現象は存在しない」と切り捨てた。もちろん、そんなことが起これば、ワクチンを接種しなくても、摂種した人の近くにいるだけで免疫効果が得られる夢のような方法だが、それは幻想にすぎない。 ところがこの記者は納得せず、7月26日の記者会見で再び誤解に基づく質問を行った。厚労省文書に「増殖型組換えウイルスワクチンは新生児、妊婦及び免疫抑制状態の患者等への伝播リスクが高いことが想定されるため、ウイルス排出については、慎重に評価すべき」との記述がある。増殖型組換えウイルスワクチンというのはレプリコンワクチンに相当する。これについて大臣が知らないのは問題だ。そんな質問だった。 これに対して武見氏は、レプリコンワクチンはmRNAだが、増殖型組換えウイルスワクチンはウイルスであり、全くの別物であること、そしてレプリコンワクチンの臨床試験においてシェディングと呼ばれる事象は生じていないと答えた。記者は少なくとも自分の誤解には気が付いたと思うが、シェディングが起こらないことについて納得したのかは分からない。