古生物学者が解説。「古生物学」と「考古学」── その違いわかりますか
「古生物学」Paleontology
一方、古生物学は「Paleontology」とつづる。同じくギリシャ語から派生しており「太古(palaios)の生物(ontos)に関する研究(logos)」をさす。PaleontologyはArchaeology(考古学)とまるで違うので、英語圏において両者が混同されることはほとんどないようだ。 この学問の概要や歴史は何度かこの連載を通して紹介してきた(こちらのバックナンバーを参照:)。ここでは大まかな概要を述べておく。化石の存在は過去何千年も前から「奇妙な生物」のイメージとして知られてきた。しかし具体的にどのような種類で生存時どのような姿をしていたのか? こうした問いかけにサイエンス的に答えるということは18―19世紀くらいになるまでほとんど進んでいなかったようだ。 例えば古代中国文明では大きな恐竜の化石を竜の骨としてあがめ、漢方薬として用いられることもあったそうだ。どうしてアルプス山脈などから海生動物の化石(貝殻など)が見つかるのか? このような「太古の生物の痕跡」という真の化石の意味が、サイエンス上の証拠とともに確かな事実として認められはじめたのは、ロバート・フック(1635―1703)やウィリアム・スミス(1769―1839)、そしてジョルジュ・キュヴィエ男爵(1769―1832)等の登場を待つ必要があった。それ以前にも、例えばルネサンス期のイタリア人レオナルド・ダ・ヴィンチやニコラウス・ステノなどはこの化石の意味に言及する興味深い考察を残していた。 ―ダヴィンチが残した2億年前の化石のスケッチはこちら: 先述したように「絶滅した生物種」、特に「天地創造」の時代(=数千年前)よりはるか以前に存在したと考えられる太古の生物の存在は、宗教的な理由によりほとんど認められなかった。(こうした概念自体さえ以前はなかった。)そして19世紀に入るまで岩石に閉じ込められた生物(=化石)は、基本的に「神によって創られたモノ」または(ノアの洪水で知られる)「大洪水の被害にあったモノ」という考えが一般的だった。