関東2部からの下剋上 ── 初のインカレベスト4へ躍進を遂げた山梨学院大学(インカレバスケ2024)
「去年、なんで私は勝たせてあげられなかったのだろう……」 今年の皇后杯1次ラウンドで筑波大学に75-68で勝利した後、山梨学院大学の林五十美監督は喜びも束の間、ため息をつくように後悔の念をつぶやいた。3年生の #5 藤澤夢叶を中心に将来有望なはずだった。しかし、昨年の関東大学女子リーグ戦で1勝(13敗)しかできず、入替戦で立教大学に敗れ、2部Aブロックへの降格が決まった。 「選手たちはいろいろと思うこともあったとは思いますが、それでも目標は2部全勝優勝・1部昇格、そしてインカレベスト4」を掲げ、林監督は選手たちの背中を押す。キャプテンの #55 日野華希は「1部に上がらなければいけないプレッシャーもありましたが、それよりも自分たちはチャレンジャーという気持ちで常に戦っていました」ともう一度立ち位置を確認する。エースの藤澤は「本当に去年の結果は悔しかったのでそこから這い上がる気持ちで、一つひとつの大会で結果を残そう」とチームをひとつにして下剋上のシーズンがはじまった。
昨年4位のシード校、東海1位の壁を乗り越え目標達成
今春の第58回関東大学女子バスケットボール選手権大会ではトーナメントを勝ち抜き、堂々3位。関東大学女子新人戦では初優勝に輝いた。その後の新人インカレでは全国ベスト8、下級生たちが急速な成長を遂げる。林監督にとって、2019年以来の2部Aブロックでのリーグ戦が開幕。翌2020年に1部へ昇格した当時、フィジカルなどの差を感じ、最初の2年間は2勝しかできなかった。「そこから1部で戦うために何をしなければいけないかを学んできました。今年また2部に降格したことで、もう一度基本に立ち返ろうと思いました」と試合を通して積み上げ、成長を促しながら有言実行の全勝突破。入替戦では立教大学にリベンジし、来年の1部昇格の目標を達成した。 初進出の皇后杯2次ラウンドでは、Wリーグのプレステージ・インターナショナル アランマーレに胸を借りる。59-65、惜しくも6点及ばずに敗退。格上に対し、林監督はインサイドを絞るディフェンスに変え、より5人全員で守る意識を高めた。このアランマーレ戦が、最終目標へ向けた良いシミュレーションにもなった。 迎えた第76回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)は1回戦から登場。互いに特徴を知り尽くす2部Aブロックの江戸川大学に73-67で勝利し、初戦を突破。2回戦は昨年のインカレ4位、日本経済大学へ挑戦。第3クォーターは劣勢となる山梨学院大学だったが、藤澤がブザービーターで3ポイントシュートをねじ込み、5点差に詰めて波に乗る。最終クォーターだけで33点を挙げ、86-76と10点差をつけてシード校を破るアップセット。 準々決勝は愛知学泉大学に78-62で勝利。キャプテンの日野は、「オフェンスリバウンドに入るようにずっと言われてきたチームルールを徹底できたことが、勝因のひとつだと思います」とガマンの戦いを制する。インカレベスト4へ駒を進め、今年の目標をすべてクリアした。