関東2部からの下剋上 ── 初のインカレベスト4へ躍進を遂げた山梨学院大学(インカレバスケ2024)
元トップリーグ選手の経験を踏まえ、感情を共有するベンチワーク
拓殖大学との3位決定戦は、マンガのようだった。「もう意地しかない。私はなぜ(そこで打つ)と思ったのですが、彼女の気持ちが本当に入った3ポイントでした。キャプテンであり、これでバスケを引退する彼女の使命感で決めたシュートでした」と林監督も驚かされた残り3.4秒。センターラインを少し越えた位置から、日野がディープスリーを放つ。ネットを大きく揺らし、82-81と山梨大学が逆転。残り時間はたった1.6秒。タイムアウトを取った拓殖大学が、自陣からの攻撃権を選択。#32 堀越梨々夏のスローインを #55 ンウォコマーベラス アダクビクターがゴール下で合わせ、シュートへつなげる。リングを舐めるようにまわりながらボールが吸い込まれ、82-83。再逆転された山梨学院大学は、全国4位で下剋上のシーズンを終えた。 藤澤は得点王(53点)、3ポイント王(11本)の2部門、日野がアシスト王(8本)を受賞。「藤澤やブレッシングも悪いときはあり、そこで必ず誰かがしっかり仕事をしてくれたことが、ここまで勝ち上がってきた大きな要因です」と林監督が言うように、新潟アルビレックスBBラビッツへのアーリーエントリーが発表された #15 久井咲良や3年生の #18 山田愛結など全員バスケが実を結んだ。 はじめてベスト4を争った2試合を終え、「緊張感や雰囲気が一気にガラッと変わるので、その部分では全然違いました」と藤澤は新たな景色を見ることができた。「来年こそ準決勝で勝って、決勝に行けるようにしたいです」と新たに決意する。4強の争いはいずれも敗れたことで、新たな壁が立ち塞がった。「次につなげるためには、体の強さやバスケットスキルだけではないところが重要。もっともっとプレーの精度を上げ、さらに経験と知識を積み上げていかなければ勝負できないと思っています」と林監督も、日本一から逆算して必要な要素に磨きをかけていく。 山梨学院大学の横断幕には、「常勝常笑」と書かれている。日野が常に「楽しもう」と仲間たちに声をかけ、コート上で笑顔を見せて体現する。林監督はそんな選手たちと一緒に跳びはねて喜び、時に涙を見せ、感情を共有するベンチワークだった。日立ハイテクやJOMO(現ENEOSサンフラワーズ)とWリーグで活躍した現役時代の経験を踏まえ、「コートの中でどれだけハッスルできるかどうかが大事。選手たちにパワーを与えるために、どんなときでも明るい声がけや前向きに伝え、選手たちと一緒になってベンチからパワーを送り続けることしかできなかったです」とインカレでの4試合すべてが林監督をはじめ、山梨学院大学にとって素晴らしい経験となった。
泉誠一