IBFバンタム王者の西田凌佑に7回KO負けしたアヌチャイに聞く「西田が統一戦を希望する中谷潤人と戦ったらどっちが勝つ?」
プロボクシングのIBF世界バンタム級タイトルマッチが15日、大阪の住吉スポーツセンターで行われ、王者の西田凌佑(28、六島)が同級14位アヌチャイ・ドーンスア(28、タイ)を7回1分37秒KOで下して初防衛を果たした。3週間前に右脇腹を痛めてスパーリングの実戦練習を一切できないままのぶっつけ本番だったが、2度ダウンを奪い、デビュー戦のTKO戦勝利以来となるKO勝利を手にした。試合後、リング上でWBC世界同級王者の中谷潤人(26、M.T)との統一戦を「やりたい」と明言したが、所属ジムの枝川孝会長は「せえへん。井上尚弥とやる言うてんねんから」と拒否した。今後西田が4人いる日本人のバンタム級王者の中でどう存在感を示していくのか注目だ。 【映像】辰吉ジュニアの壮絶TKO負けシーン
枝川会長曰く「ミスター判定勝利」のIBF王者がそのレッテルを剥がす。 5ラウンドに意気盛んなタイ人の出鼻に右のフックを浴びせて巻き込むように倒してグローブをキャンバスにつかせた。7ラウンドには右のパンチを外すと同時に打ち抜いた左のボディカウンター。 「タイ人は思いきり打っても倒れない。抜いて打つこと(カウンター)やコツコツを心掛けた。あそこは右が見えたので、ボディが当たるかなと」 計算通りの芸術品のボディショットにアヌチャイは悶絶してキャンバスにひっくり返った。「ボデイが効いた。息ができなくなった」。息も絶え絶えに立ち上がったが、レフェリーは10カウントを数えた。 「もう立ち上がってくれるなと思った。早く終わらせたかった」 その瞬間、西田は右手を掲げて喜びを表現した。 デビュー戦のTKO勝利以来、プロ10戦目で2度目のKO勝利。10カウントを相手に聞かせたのはプロアマ通じて初だ。 だが、リング上でのインタビューで西田は会場を「え?」と異様な空気に包んだ。「内容はプロキャリアで一番悪かった」と反省を口にしたのだ。 「もらいすぎた。判定で倒せず終わるショックと同じくらいショック」 顔は腫れてはいないが、ところどころ赤くなっていた。 打撃戦の中で右ストレートの被弾が目立った。4ラウンドはジャッジの3人がタイ人を支持。フィリピン人ジャッジは、6ラウンドのうち、1、2、4と3ラウンドを挑戦者にポイントをつけていた。 西田にはもう一人の敵がいた。 「不安」という名の敵だ。 実は3週間前のスパーリングで右脇腹を痛め、触れば飛び上がるほどの激痛が走る状況で、試合までスパーリングを含む実戦練習を一切できなかった。ボディ禁止のマススパーを遠い距離から行い、なんとか実戦感覚を磨こうとしたが、パンチの強弱や、西田の生命線である距離感の把握などの本来やるべき微調整を実行できなかった。 「(腹を)打たれて大丈夫か。距離をどうはかるか、不安でした」 名コンビを組む武市晃輔トレーナーも「ぶっつけ本番。殴られてみないとどうなるかわからなかった。加えてユーネクストの初めてのメイン、1KOコンプレックスもどこかにあったんだと思う。仕上がりは悪くなかったが」と振り返った。 1、2ラウンドはほぼジャブしか打てなかった。 「ジャブも不安のまま出していた」 得意のステップバックでパンチを外すが「届かなかった」というタイ人は、歩くような変則な入り方をしてきた。武市トレーナーは、3ラウンドからは「変に距離を取ると効かされる」と、距離を詰めてガードでパンチをブロックした上での打撃戦を指示した。西田はステップバックから前に出てのガードにディフェンスを切り替え、打撃戦に打って出た。左ストレートでぐらつかせたが、ディフェンスが甘くなって反撃も食らい「倒しにいくな」と枝川会長の制する声が飛ぶほどだった。 4ラウンドも前に出て相打ち覚悟で放ってきた右の強打を何発かもらう。 「(このままなら)倒されると思った。雑に倒しに行こうという気持ちが出過ぎた」 もし相手がランカーの下位ではなく、パンチ力のある実力者であれば、かなりのダメージを受けていただろう。 枝川会長は「いつもの西田ではない」との異常を察知していた。1分間のインターバルで武市トレーナーと、多くの会話を交わしながら、ラウンドごとに修正を加えていく西田の口数が少なかったのだ。ようやく言葉が出始めたのは、一度目のダウンを奪う5ラウンドくらいからだったという。 その中でも陣営が「ボディで削れ」と叫び続けていたボディへの左ストレート、左右のボディアッパーが徐々にタイ人を弱らせた。最後のフィニッシュへの布石だけはしたたかに打っていたのである。
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