ロシアW杯の会場建設で大問題発生
FIFAワールドカップは来年の6月14日から7月15日までロシアの11都市の12箇所のスタジアムで開催されるが、その12箇所の会場のうち、10箇所のスタジアムが新築されている。現在、モスクワ、カリーニングラード、カザン、ニジニ・ノヴゴロド、サンクトペテルブルク、サマーラ、サランスク、ソチ、ヴォルゴグラード、ロストフ・ナ・ドヌ、エカテリンブルクの10都市のスタジアムで、準決勝を行うゼニトスタジアムなどが急ピッチで建設されているが、その労働環境が劣悪で大問題になっていることが明らかになった。 ニューヨークタイムズが報じたもので。「ロシアワールドカップの会場で、17人の死亡と労働者酷使が調査によって明らかになった」と伝えた。 同記事は、人権擁護団体のヒューマンライツ・ウォッチの調査を引用したもので、「少なくとも17人の労働者が死亡し、その他の多くの労働者も搾取されたり、虐待されたりしている」という衝撃的な内容。 その団体の調査では、ロシア政府とともにFIFAの監視体制についても批判している。 レポートは「FIFAが透明性を欠き、建設工事の労働環境を正すための監視を怠っている」とし、ヒューマンライツ・ウォッチの調査書執筆者であるジェーン・バカナン氏の「FIFAは汚職事件を浄化している最中なのに、同じような状況でこのようなことが起こっているのではないか」というコメントを取り上げている。 工事中の死亡者が17人もいることは、スイスに拠点を置く「ビルディング・アンド・ウッドワーカーズ・インターナショナル(BWI)」によって明らかになったというが、死因の詳細については述べられていない。 これまでの大規模スポーツイベント、主に五輪での工事中の死亡事故についてのデータもあり、同記事によると、「2014年のソチ五輪では少なくとも70人が工事中に死亡。2016年のリオデジャネイロ五輪の前には、16人が死亡。2008年の北京五輪の前には6人が死亡。しかし、2012年ロンドン五輪のときに建設されたオリンピックパークの建設時は死亡事故がゼロ」という。 ロシアでのスタジアム建設中の事故が多いことについて、ビルディング・アンド・ウッドワーカーズ・インターナショナルグローバル組合のユーソン書記長は、怒りのコメントを寄せている。 「高所での作業が増え、ワールドカップまでに完成させるため作業が急かされているからではないか。彼らはソチ五輪で経験がある。そこから学んだはずだ。ソチ五輪の建設現場での事故は工事の終わりの時期に起きている。今までになぜ、そのことを学んでこなかったのだ」と、多くの労働者が死亡したソチ五輪の施設建設時の事故の経験を活かしていないと指摘した。