中国政府に逆らうと「無理やり注射され、ゾンビのようにされた」 仕事奪われ強制入院、命からがら「自由の国」日本へ…でも待っていたのは「入管の壁」
2012年5月の昼ごろ、中国、上海近くの江蘇省・無錫市に住む周暁(しゅう・ぎょう)さん宅がノックされた。ドアを開けると、警察官が3人。 【写真】2人の中国人選手が抱き合う写真、検閲対象に
「ちょっと話したいから来てくれ」 周さんは拘束され、車に乗せられた。思い当たる理由はあった。1週間前、政府を批判する行動を取ったためだ。連れて行かれた先は、市内の精神病院。地獄のような強制入院生活の始まりだった…。 中国政府による政治的迫害を理由に、海外に逃亡する中国人たち。香港の民主化を求めて活動し、日本でも有名になった周庭(アグネス・チョウ)さんはカナダに出国したが、中には日本に向かう人もいる。現在、大阪市に暮らす周さんもその1人だ。 「中国には自由がない。日本は自由の国」と期待して来日し、難民申請をしたものの壁にぶち当たった。日本の難民認定率はわずか1%未満。「自由と民主のある場所で暮らしたい」という切なる願いは、認められるのか。(共同通信=武田惇志、福原健三郎) ▽文化大革命を批判、転職させられ… 周暁さんは1986年、無錫市で生まれた。1年後に両親が離婚し、母方の祖父に引き取られて育った。少年時代の将来の夢は政治家で、中華民国を建国した孫文のようになること。
孫文を尊敬するようになったのは、民主主義者だった叔父に感化され、歴史好きでもあったためだ。話が孫文について及ぶと、周さんは「中華民国はアジア最初の自由国です」と誇らしげに語る。 地元の高校を卒業後、2004年にIT技術の専門学校である無錫職業技術学院に入学。学生がスピーチをする授業で、周さんは文化大革命について次のような意見を述べた。 「文革の結果、真実を言う者がいなくなり、国全体が混乱に陥って停滞した」 教員や同級生がその場で批判することはなかったものの、発言内容は外部に漏れた。 その結果、政府の公文書に記載されてしまったという。2007年に専門学校を卒業し、IT系の会社に就職したものの、共産党への批判的な態度が同僚や上司に伝わった。会社を辞めざるを得なくなり、転職を余儀なくされた。同じようなことはその後もあり、転職を繰り返した。 ▽爆音で流した天安門事件の映像音声 2012年5月、システムと外部のインターネットをつなぐVPN(仮想専用線)を使った際、YouTubeでイギリスBBC放送による天安門事件のドキュメンタリー映像を見つけ、衝撃を受けた。