多くの人がじつは知らない「日本人の働き方」の意外な実態
年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。 【写真】意外と知らない、日本経済「10の大変化」とは… 10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。
正規雇用から非正規雇用に
ここでは、総務省「労働力調査」から男性の年齢階層別就業形態を取ることで、年齢を重ねるにつれて人々がどのように働き方を変えているかを検証する(図表1-17)。 まず、用語の説明をすると、労働力調査上の役員は会社・団体等に所属する役員を指しており、自営業主とは区別されている。役員と聞くと一定規模以上の会社の役員を想定しがちだが、ボリューム層は中小零細企業の役員である。また、自営業主は自営(雇人あり)と自営(雇人なし)に分けられる。自営業で人を雇って仕事をしている人は前者、いわゆるフリーランスで仕事をする人などが含まれるのが後者である。 50代前半時点の男性の就業形態をみると、この年代で最も一般的な働き方は会社等で正規の従業員として勤める働き方である。無職の人も分母に入れた上で正規雇用者の割合を算出すると69.9%となり、そのほかの働き方をしている人は非就業者を含めても10人に3人程度である。そして、正規雇用者として働く人の比率は歳を重ねるごとに減っていく。50代後半では64.8%、60代前半で33.0%、60代後半で11.4%と推移し、高齢期には少数派の働き方に変わる。 その代わりに増えるのが非正規で働く人たちである。非正規雇用者が占める割合は50代前半時点では数%にすぎないが、60代後半にはパート・アルバイトで13.6%、契約社員等で12.9%と、定年後の最も一般的な働き方に変わる。 こうした働き方に抵抗感がある人もいるかもしれない。確かに現役時代に関しては、正規雇用で安定した職を得ることの重要性は高く、一定程度の収入を得ようと思えば非正規雇用という働き方は適したものにはならないことが多い。 しかし、定年後に関しては、正規雇用が優れていて、そうでない就業形態が劣っているという認識は改める必要があるだろう。 契約社員やパート・アルバイトという就業の選択肢を選ぶことで、自身のストレスがない範囲で日々の生活のために無理なく稼ぐことができるのであれば、むしろ定年後においてはそういった選択は好ましいものになる。また、仮に第一線で働くまでの意欲はもてなかったとしても、自身がいまできる範囲で世の中に貢献していこうという気持ちは社会的にも応援されてしかるべきである。 役員や自営業主(雇人あり)に目を移してみると、こちらは比率がほとんど変わっていない。役員で見ると、50代前半では7.1%だったのが60代後半には7.7%とほぼ横ばいとなる。先述の通り、名の知れた大企業の役員は全国的にはごく少数であり、この就職形態に関しては自営も含めて小さくビジネスをしている人が大半である。 こうした人は長く働き続ける傾向があるため全体に占める割合もほとんど変わらない。逆に言えば、50代以降に起業をしてこうしたカテゴリーに新規参入する人が少ないということも、この結果から推察される。もちろん、例外はいくらでもあるが、全体としては少数派の事例であるということだ。