多くの人がじつは知らない「日本人の働き方」の意外な実態
「定年後フリーランス」は意外と多い
さらに、フリーランスは実は定年後の現実的な働き方の一つの形態である。ここでは、自営(雇人なし)を広くフリーランスとみなすと、フリーランスの働き方は50代前半では6.4%と少数派であったが、50代後半で7.4%、60代前半で8.4%、60代後半で10.9%まで増える。そして、70代前半では就業者のうちフリーランスの人は約2割で、最も多い働き方になる。 フリーランスというと自由に働けるメリットばかりが着目されるが、相応にリスクの高い働き方である。まず、報酬水準が低く不安定である。会社員のように安定して生活するに十分な報酬を得られる人はフリーランスで働く人のごくわずかである。 そして何より社会保険の問題が大きい。日頃意識していない人も多いかもしれないが、医療保険や年金保険などの社会保険に企業を通じて加入できるということは、企業で働く大きなメリットである。 自営であれば医療保険は国民健康保などになるが、国民健康保険の保険料負担は、事業主負担がない分高くなる。全国市町村の平均保険料水準を調べたデータによると、年収500万円であれば年43.6万円、年収700万円であれば年62.6万円が国保だけで持っていかれてしまう。 さらに問題なのは、年金保険の場合は国民年金に加入することになるから、高齢期の厚生年金保険の給付を受けることができないという点にある。厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は2020年時点で5万6358円。この程度の金額では、老後に豊かな暮らしを送ることはできない。現役時代をフリーランスで過ごすのであれば私的年金で多額の積み立てをする必要があるが、そういった事情を理解している人はそこまで多くないのではないか。 フリーランスという働き方は、若い人にとっては厳しい働き方になる。しかし、これもやはり高齢期の働き方となれば話は別である。定年後はそもそも年金を受け取れる年齢に差し掛かっていることから、年金を受け取りながらフリーランスとして少額の金銭を稼ぐという働き方は十分ありうる。また、そもそも収入水準が低いことから国保保険料も大きな問題とはなりにくい。組織に縛られずに自由に働けるというメリットを感じながらフリーランスとして働くことは、定年後の現実的な選択肢となるだろう。