歌手の夢を諦め葛藤した過去 夢見た場所でのライブを開催した、Uruの意識改革
柔らかく透明感のある歌声をもつシンガー・ソングライター、Uru。映画やドラマ、アニメで数多くの楽曲を生み出してきた。UruはYouTubeへの動画投稿を経て、2016年にメジャーデビュー。2021年のライブ前には、心と身体のバランスを崩してしまったことも。夢見た場所でのライブを開催して、Uruの中で生まれた意識改革とは。(取材・文:柴那典/撮影:木村篤史/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「どうせなれっこない」歌手になりたい気持ちを押し殺していた
「度胸がなくて、人前で歌うことに対して抵抗があったんです」 Uruは、ドラマ「中学聖日記」(2018年)やドラマ「テセウスの船」(2020年)、映画「ファーストラヴ」(2021年)などさまざまな作品で主題歌を書き下ろしてきた。その柔らかいメロディには幅広い世代から支持が集まる。 ライブでは幻想的な演出とともに包容力のある歌声を響かせ、観衆を魅了する。しかし、大きなステージに立つ自分の姿について「今でもどこか信じられない」とUruは言う。 歌うことは幼い頃から好きだった。中学生のときにはピアノを弾きながら曲を作っていた。オーディションを受けたこともあったが、引っ込み思案な性格のせいで結果には結びつかなかった。 「高校生の頃、自分がどれくらい通用するかを知りたくて、応募したんです。書類選考とデモテープ審査は合格したんですけれど、度胸がなくて次の審査をそのままフェードアウトしてしまったんです。あのとき行けばよかったのにという後悔が、その後もずっとくすぶっていました」 思春期を過ぎても、Uruは歌手になる夢を押し殺して過ごした。 「心の奥底では歌を歌う仕事をしたいってずっと思っていました。でも、どうせなれっこないって、自分で自分を抑えていて」
音楽の道を諦め葛藤 転機は憧れのアーティストの歌声
そんなUruは、あるとき、音楽の道を志すことを決意する。きっかけは、憧れの存在であるスキマスイッチのライブを見たことだった。場所は、5012席と国内有数の規模を持つ東京国際フォーラム・ホールA。 「すごく苦しかった時期で、同じ空間で音楽を聴けた感動だけでなく、お二人から言葉以上の何かを受け取った感じがして。その当時は音楽の道を諦めていたので、本当にこれでいいのかという葛藤もあったし、自分のアイデンティティが確立できない時期の漠然とした不安もあって。だから、お二人の音楽にすごく救われました。自分もあそこに立ちたいと思えた。その気持ちに素直にならないと後悔する気がしたんです」 それでも、臆病な性格はなかなか変わらなかった。路上ライブをしようと駅前に出かけたのに、怖くなって何もできず帰途についたこともあった。 「人前でパフォーマンスすることに慣れていかなきゃいけないと思って、自分磨きのつもりで行ったんですけど。何も磨けずに帰ってきた感じでした」