日本卓球界の希望 ~16歳張本美和の魅力
パリ五輪の日本選手団では、フレッシュな顔触れの活躍が新風を吹き込んだ。その中の一人が卓球女子の16歳、張本美和(木下グループ)。スポーツの祭典に初出場ながら団体戦の銀メダル獲得に大きく貢献した。これまでは、同じく五輪代表の張本智和(智和企画)の妹という立場で語られることが多かったが、自らの存在感を示した。素顔も親しまれやすい人柄で、「張本美和」個人として飛躍する礎を築いた。
成長を支える思考回路
今大会には団体戦の要員として日本代表に選ばれた。五輪デビューは8月5日の1回戦、ポーランド戦。第2試合のシングルスに登場すると速攻がさえ、重圧をものともせずにストレート勝ちを収めた。続くタイとの準々決勝でもシングルスでストレート勝ち。ドイツとの準決勝では第2試合で敗れた後、2―1で迎えた第4試合のシングルスで雪辱した。銀メダル以上を確定させる立役者になって感涙。五輪の舞台の特別感も想起させた。 宿敵中国との決勝戦では期待の大きさが表れた。最初のダブルスの試合で、それまで平野美宇(木下グループ)が務めていた早田ひな(日本生命)のパートナーに抜てきされたのだ。力強いドライブで攻勢に立つなど起用に応えた。ゲームカウント2―2から最終ゲームは9―5とリード。金星まであと2点と迫って見せ場をつくった。最終的に逆転を許してチームとしても敗戦。2大会連続の銀メダルに終わったものの、確かな足跡を記した。 兄の背中を追うようにして、2歳で卓球を始めた。国際大会を含めて試合の場数を踏み、既に客観的に自己分析する力を備えている。五輪を終え「夢の舞台で戦えたというのもあるし、逆に少し現実的というか、いつも通りの試合をしたという感覚もある。負けた試合があってすごく悔しい気持ちもあるけど、自分の目標としていた、最後まで諦めず戦うことはできた」。自分の中にしっかりとした評価軸を持っていることは、ステップを踏みながら着実に成長していることと無関係ではあるまい。