日本卓球界の希望 ~16歳張本美和の魅力
女子充実の一翼
ここ数年の伸びは目覚ましいものがある。2021年に世界ユース選手権U―15で4冠に輝いた。昨年11月のパリ五輪国内選考対象大会では早田や東京五輪で三つのメダルを手にした伊藤美誠(スターツ)を破って優勝。今年4月のワールドカップ(W杯)では当時世界ランキング3位の王芸迪(中国)を撃破した。8月20日に発表されたシングルスの世界ランキングでは、5位の早田に次いで日本勢2番手の8位につけている。4年後のロサンゼルス五輪では、シングルス代表の有力候補なのは間違いない。 こうした状況は卓球界全体にとっても好ましい。例えば福原愛、平野早矢香、石川佳純―。日本女子の主力は時代とともに変遷を遂げてきた。2012年ロンドン五輪で準優勝して以降、五輪のメダルが途切れたことがない女子。特にここ2大会は連続して団体で銀メダルなど、中国を追う2番手の地位を確立した。張本は「平野選手と早田選手に引っ張っていただいたおかげで、貴重な経験をさせていただいた」と感謝。健全な世代交代の繰り返しが日本女子の充実ぶりにつながっている。 その一翼を担う張本は身長166cmと恵まれ、シェークハンドからの得意なバックハンド、パワフルなドライブは、海外の年上の強豪たちとも渡り合う。関係者によると、筋力トレーニングにも積極的と向上心豊か。「もっともっとシングルスを頑張らないといけない。自分の実力を上げていくことが一番大事」と今後をにらんでいる。
愛されキャラ
集中した試合中の表情から一転、普段のキャラクターでもタレント性を感じさせる。例えば、試合の前や合間には、好きというK-POPグループをまねて切れのあるダンスを披露。TikTokなどで紹介されて話題を呼んでいる。 テレビ番組に出演したり、試合後などにインタビューを受けたりする際は飾りすぎることなく、自然体の姿勢が目を引く。パリ五輪からの帰国会見では、やりたいことについて次のように話した。「もちろん、おいしいものをいっぱい食べたいし、夏ですごく暑いのでウオータースライダーとか満喫して、遊園地とかっていうよりプールとかで遊びたい」。両手で丁寧にマイクを持ちながらの、10代らしさが交じった受け答えは好感を与えた。中学で地元の宮城県から神奈川県川崎市に引っ越したが、競技だけではなく学校生活との両立を重視。社会生活をおろそかにしない側面が人間性を育んでいるともいえる。 国内では当面、8月24日に開幕したノジマTリーグでプレーする姿を見ることができる。優勝チームには賞金1千万円などが贈られるリーグで、木下アビエル神奈川の一員として2季ぶりの制覇を狙う。埼玉県越谷市にある日本最大級の巨大ショッピングモール、イオンレイクタウンmoriで同19日に開かれたリーグ開幕記者会見に出席し、招待されたファンたちの前で笑みを振りまいた。「オリンピックが終わって卓球人生が終わりではなくて、ここからがスタートだと思う」。4年後のロサンゼルス五輪のときは20歳。ともに8歳年上に当たる早田、平野らと切磋琢磨しながら、日本女子種目未踏の五輪金メダルを目指す。
VictorySportsNews編集部