原発のごみ、日本に埋める場所ありますか? 1.なぜ地下に埋めるのか?
吉田:はい。ありがとうございます。で、それで早速じゃあ、中身に入りますが、先ほど岩崎さんからもちょっとご紹介ありましたけど、地層処分というのはどういう仕組みなのかということですが、ここにありますように、まずはガラス固化体、これが一番のその、放射性廃棄物に当たるものです。 で、ガラスの中に放射性、いわゆる核燃料ですね。使用済み核燃料の中から、もう使えない放射性物質、元素、例えば、放射性元素は何を今、発熱の原料に使っているかというとウランです。皆さん、ウランっていうのは聞いたことがあると思うんですね。で、ウランをこの原子力発電所で核分裂させたときの熱を使って、水蒸気を作って、それでもってタービンを回して、電気を起こしていくと。 で、核分裂をさせますので、あとでもちょっと話をしますが、ウランが分裂するともう、ウランではなくなるので。で、要は廃棄物になってしまうわけですが、核燃料の中に使われているウランが、全て100%分裂するわけではありません。分裂するウランと、分裂しないウランというのがあります。その辺もあとで、簡単にですが仕組みはお話しします。 その分裂したウランを取り出す。それが実は六カ所村っていう青森県の再処理工場でおこなわれていることですね。そこで再処理して取り出す。取り出すときは核燃料を、硝酸溶液に溶かし込まして、その溶液の中で、要らない、使えない放射性元素をガラス、このホウケイ酸ガラスというものと混ぜ込んで、そしてガラス化します。それが高レベル放射性廃棄物です。 実は今、ここにそのホウケイ酸ガラスを持ってきてます。これはもちろん放射性元素が含まれてないものですね。で、これを溶かします。溶かしたものに先ほどの放射性元素を混ぜ込んで、そして冷やして固めるというものです。非常に固いもので、だいたい数百度で溶けるんですが、皆さんにお回ししますので、どんなものかちょっと見ていただければと思うんですけど。 で、これは、シリカをベースに。ガラスですので、シリカがベースになった物質ですね。ですので、地下にそれをそのまま持っていって、持っていくこともできますし、要するにそれが冷えて固まれば、それがすぐに溶け出すとかいうこともあり得ないっていうか、ないというものですね。 で、それを、このキャニスターという容器の中に入れといて、さらにそれをこの鉄の容器、これ、オーバーパックといいます。で、オーバーパックの中に入れたものを、さらに地下に持っていって、こういう縦穴、今、これ縦穴ですけど、横穴にするか縦穴にするかまたその都度考えないといけないですが、これは一応、縦穴方式といわれるものの中で、ここにガラス固化体、そして金属の、鉄製のオーバーパックがあって、そして周りをさらにベントナイトっていう粘土鉱物なんですが、それで覆ったものが300メートルよりも深い場所に埋設処分されるという、こういう仕組みが地層処分というふうにいわれるものです。 ちなみに、なぜガラスを使うのかとか、なぜ金属、鉄を使うのかとか、なぜ粘土、いわゆるベントナイトを使うのかっていう、これも実は理由があります。ガラスは先ほども言いましたが、まずは地下水っていうか、水に溶けにくいという性質ですね。で、地下水は、皆さん温泉に行ったりすることもあると思いますので分かると思いますけど、ガラスはアルカリ性、pH12とかそれ以上になると非常に溶けやすくなります。ですが、地下の水は、地下水は基本的にはせいぜい高くてもpH10。pHって皆さんご存じですよね。オレンジジュースだとpH3ぐらいとか。酢だとpH、それぐらいですね。3もいかないかな。酢だと3点いくつとか、それぐらいかもしれませんが、そういう、酸、アルカリっていうものですね。 地下水は、だいたいそのpHがだいたい10から4とか、それくらいなので、それで温泉に入って気持ちがいいというのがあるんですけど、そういう状態では基本的にはガラスは溶けない。溶けにくいので、そうするとそこの中に閉じ込められている放射性元素も溶け出さないということですね。 で、あと、金属を使う理由は何かというと、ここから放射線が出ますのでそれを遮蔽するっていう役割もありますが、ここのガラス固化体に入っている放射性元素っていうのは、還元状態だと溶けにくいという性質があります。還元というのはどういう状態かっていうと、酸素がない状態ですね。地下は基本的に酸素がない。ありませんよね。 で、ちょっと、少し分かりにくいかもしれませんが、例えば、金魚鉢で金魚が口を開けて水面にこう、ぷかぷかやっているっていう状態は、水の中の酸素が消費されてしまって、その量が少なくなったので口を開けてぱくぱくしている。そういう状態が還元状態に近い状態になっているということですね。 で、そういう地下水の状態では、ここの中に入っている元素は非常に溶けにくいっていう性質もありますので、で、さらにそれを鉄で覆うっていうことは、鉄は酸素を消費します。つまり酸化するんですよね。「さびる」ということです。さびるという状態の意味は、もし万が一、酸素が入ってきた水がここにやってきても、その地下水の中の酸素を食って自分がさびることによって回りを還元しますので、そういう性質もあって、オーバーパックという鉄を日本では選んでるわけです。 さらに周りをベントナイトっていう粘土鉱物をなぜ使うかというと、粘土鉱物はいろいろな元素を吸着してくれる働きがあります。吸着剤としてよく使われると。そういう仕組みも活用して、それぞれの人工的な素材、もともとは天然の素材を利用しているんですが、そういったものをいくつも組み合わせて、地下に処分するという仕組みを取っていると。 これを、ここに書いている多重のバリアのシステムというふうな、ちょっと専門的なんですけど、なぜ多重のバリアなのかっていうのを、ガラスだけではなくて、オーバーパックもベントナイトも、そして地下は距離的に隔離されていると。で、さらに周辺には岩石、つまり鉱物があると。で、それらがまた、その放射性元素を吸着してくれたりするという役割を持ってくれますので、そういったもので多重バリアシステムというふうにいっているということですね。 こちらのものを人工的に閉じ込めることを、人工バリアというふうによくいいます。で、こっちのものは天然の岩石、鉱物ですので、これを天然のバリアということで天然バリアというような言い方をしているわけなんですが、こういった複合システムで放射性元素を外に漏らさないようにしましょうというのが基本的な考え方です。 それはどうしてかというと、先ほど岩崎さんの話にもありましたが、この放射性元素は、だいたい数万年ぐらい寿命を持っているので、その数万年間、人間界からやっぱり隔離しなきゃいけないというのが基本的なコンセプトになっていますので。 ただ、その数万年後、私たちがいるかどうか分かりませんよね。で、実際後ろを見ると、というか過去を見れば、二万数千年前にネアンデルタール人は、滅びているっていうそういう事実もありますが、将来の世代に対してそういった負担をできるだけ軽減しようというようなこともありで、地下に処分してしまって、もし、もしですよ、地上の社会、環境、国がどうなっているかも分かりませんが、人類がどうなっているかっていうのもありますけど、とか、地表環境が変わっても、地下環境が維持してくれるだろうというのが基本的な考えになっています。