「家族を亡くした格闘家はどんな思いでリングに上がるのか」。映画『若き見知らぬ者たち』の福山翔大とUFCファイター平良達郎が語り合う!
10月11日より全国公開の映画『若き見知らぬ者たち』で総合格闘家役を演じた俳優、福山翔大と、同12日にアメリカで試合に臨む無敗のUFCファイター、平良達郎のスペシャル対談(全3回の3回目/1回目・2回目はこちら)。 【写真】『若き見知らぬ者たち』のリアルすぎる試合シーン なんの前触れもなく殺される兄・風間彩人(磯村勇斗)。その悲しみを胸に闘いの舞台に立つ弟・風間壮平(福山翔太)。内山拓也監督は兄の非情な死と、総合格闘技を通して生き抜こうとする弟の生がシンクロする瞬間を撮れないかと腐心したという。作品を見る限り、その思惑は見事に結実したのではないか。 生と死を見つめた異色の映画を媒体とした、格闘家と俳優の対談はさらに熱を帯びていく。 * * * 平良 映画の中で、福山さんはお兄さんが亡くなった後に試合に挑むけど、見ていてモヤモヤした気持ちになりましたね。僕は「練習したことをどれだけ試合で出せるか」だけだけど、ああいうシチュエーションだったら勝っても素直に喜べない。個人的に「ああいう悲惨な状況で勝ったら、どんな気持ちになるの?」という疑問が湧きました。 福山 試合後の壮平の気持ちについて疑問を持たれるとは、さすがプロのファイターとして生きている平良選手ですね。僕自身は、チョークで一本を獲った後は燃え尽きたような感覚になりました。 映画の中で、病を患う母・麻美(霧島れいか)のその後は描かれていないけど、おそらくもうすぐこの世を去る。そういう立ち向かわないといけない問題が多々ある状況の中で、映画はエンディングを迎えるわけです。その中でも僕が演じた壮平という人間は、それでも前を向いていてほしいと思わせるキャラクターでした。映画のラストシーンで壮平が、亡くなった父から兄が引き継いだバーのカウンターで佇んでいますが、あれはまさにそういう気持ちで演じていました。 平良 僕もUFC5戦目の直前におじいちゃんが亡くなって、葬式に参列することもできずアメリカに向いました。おじいちゃんは勝利の喜びよりケガを心配する人だったので、帰国したらすぐお墓に「無事に帰ってこれたよ」と報告しにいきました。この映画の終わり方は渋かったので、チャンピオンベルトを獲ることで明るく終わるというわけではなく、壮平の人生に同情してしまいましたね。 福山 もちろん、目を背けたくなるような現実を描いている作品なので重たい部分もありますが、それでも決して諦めない。最後に壮平は祈りにも似た気持ちを抱いていました。 ──もしこの映画のように理不尽な暴力に直面したら、平良選手だったらどうしますか?