「家族を亡くした格闘家はどんな思いでリングに上がるのか」。映画『若き見知らぬ者たち』の福山翔大とUFCファイター平良達郎が語り合う!
平良 反発しますね。レベルは違う話だけど、僕、中学生のとき野球をやっていたんですよ。そこには暴力を振るうコーチがいた。体格は僕より大きいので怖くて仕方なかったけど、当たり前のように手を出してくる。ある日、暴力を振るわれたとき、自分の感情を吐き出すかのように舌打ちしてしまったんですよ。そうしたらビンタされたけど、自分が暴力に反対しているという姿勢はちゃんと伝えたつもりです。 福山 そのようなことがあったんですか。映画の中身の捉え方は人それぞれだと思いますが、壮平を演じた僕としては(兄の死や暴力シーンも含め)決して後ろ向きな作品ではないと思っています。 平良 もちろん格闘シーンは興奮しました。試合前にもかかわらず(兄の死によって)壮平の気持ちがズーンと沈んでいたり、場面場面で役者さんの感情がどんどん変わっていく作品だと思いました。 福山 平良選手はもうすぐ(10月12日)試合じゃないですか。これからUFCフライ級ランキング1位の選手と闘うというのに、このような機会をいただきありがとうございます。最後にひとつ質問してもいいですか? 平良 もちろんどうぞ。 福山 普段シャドー(ボクシング)をやるときのコンビネーションのパターンはお持ちですか? 体をほぐす、相手を想定してやる、打撃からタックルにいく......とか。あるいは自分ならではのコンビネーションがあったりしますか? 平良 シャドーをやるときにはまず対戦相手をイメージしながらやりますね。でも、新人の頃はもう型(かた)を繰り返している感じで、相手をイメージしてできるようになったのは最近だと思います。 福山 えっ、最近なんですか!? 平良 はい、そうです。ちょっと前まではイメージするということを知っているようでできていなかった。今は試合に近い感覚で、「今、相手の足が止まっているな」とか判断して動いたり、フェイク(決定打を放つための布石)やフェイントを混ぜながらやるようにしています。コーチとも「フェイントを入れたら、相手は一歩下がるよね」と会話をしたり。キャリアを重ねるにつれ、頭でイメージする内容もだんだん変わってきましたね。 福山 (感心した面持ちで)へぇ。 平良 だからシャドーも(表面上は)一緒のことをやっているように見えるかもしれないけど、頭の使い方は以前と全然違いますね。 福山 最初は何から入ります? やっぱりジャブから?