EVかFCVかじゃない、2050年のトヨタ 寺師副社長インタビュー(4)
“液体水素っていうのも近い将来は考えなきゃいけない”
池田:だから手づくりですごい手間が掛かってコストも下がらない。それにサイズが大きいし、高圧に耐えるために形が筒型限定っていうことが問題になってるんですが。 寺師:そうですね。だから液体水素っていうのも近い将来は考えなきゃいけない。だから、そういう水素そのものの載せ方とか、そういうことも含めてやっていかなきゃいけないかなと思ってるんですよね。 池田:千代田化工建設がトルエンに混ぜて、気体の1/500の体積を常温・常圧でやれると言ってますよね。で、トルエンということになると、ガソリンのインフラがそのまま使えますよね。トルエンとガソリンって、法律上の扱いが危険物第4類第一石油類で一緒なんですけど。それが可能だとするとそれはすごく面白い話で、今のガソリンスタンドのポンプで普通に水素が入れられるようになると。 寺師:というようなことも含めて、水素そのものの技術開発も必要なんですよね。こうなったときにトヨタ単独でそれもやりますかってなると、これはもうエネルギー政策の範疇です。エネルギーの水素をどう使ってどんな作り方でやりますかっていうのが、これはもうどこか1社がやることではなく、やっぱり官民みんなで一緒にチームを組んでやるのがいいんじゃないかと。 池田:要するに、もうジャンルが広くなり過ぎて、それを全部トヨタが抱えるのは合理的ではなくなりつつあるっていうことなんですね。 寺師:まさに月面ローバーと一緒なんですよ。宇宙に行ってクルマ1台走らせようって考えると、あらゆる技術が未知数でクエスチョンマークだと思うんです、今は。それを解くのはトヨタだけじゃないでしょうっていう。トヨタが皆さんに自社のビジョンをお伝えする役割はあるんだろうなっていうのは思いますけどね。 池田:今、環境の話をすると出てくるのは「Tank to Pipe」、要するに燃料を入れたところから排気ガスが出るところまで、ここだけで見る見方と、それから「Well to Wheel」、要するに井戸から石油を掘ってタイヤを回すまで全部っていう見方があるじゃないですか。もっと先も含む考え方もいろいろあるんですけど、ひとまず数値的な裏付けがある程度取れているのはそこまでで。で、Tank to Pipeでは確かにFCVはゼロエミッションなんですが、じゃあWell to Wheelで見たときには、水素をどうやってつくるのかによってストーリーが変わってくる。石油から作っていたんじゃ全然ゼロエミッションじゃないです。これは今、水素のつくり方としてはどんなふうな考え方なんですか。 寺師:最初のエネルギーをつくるところから、走るところまででどうですかっていう議論はあって、それはしかるべきで僕もそのとおりだと思うんですけど、最終的には近い将来、それぞれの地域だとか国が、どういうエネルギープランで行くんでしょうかっていう、本当は根本的にはそこの問題だと思うんですよね。そうなったときに、今の断面を切り取って、水素のつくり方でCO2が幾らとかっていうことも意味がなくはないんですけど、もっとCO2が少ない水素のつくり方を考えましょうっていう、先々の変化も見ていかなくてはなりません。 だからちょっと時々順番が変わっちゃうのは、Well to Wheelで、こっちのほうがCO2が大きいから、だからこれは駄目だっていうことじゃなく、最終的なエネルギープランの着地点を見据えて、それを実現するためにどんな技術開発が必要なんでしょうかっていう考え方で言うと、多様な選択肢はあるんだろうと。