全員揃わないと「遺産分割」はできない…“相続人が行方不明”の場合、相続手続きの進め方は?
相続人が行方不明でも相続登記はできる?
相続人が行方不明でも次のケースの場合、不在者財産管理人の選任の申し立てや失踪宣告の申し立てをしなくても、相続登記は可能です。 ・被相続人が遺言書を作成していた ・法定相続分の通りに相続登記する 遺言書で誰が土地や建物を引き継ぐのか明記されていれば、遺産分割協議を経ずに指定された人が不動産を取得します。行方不明の相続人がいても、引き継ぐ相続人が相続登記を申請できます。 相続不動産を法定相続分のとおりに各相続人がそれぞれ引き継ぎ、共有名義として相続登記が可能です。ただし、行方不明の相続人がいると、不動産売却等の処分行為はできないので注意が必要です。
行方不明の相続人がいた場合の【相続の実例】
こちらでは遺産分割協議を行う際に行方不明の相続人がいて、相続登記が進まなかった例を取り上げます。 【経緯】 被相続人が不動産を数多く所有した状態で亡くなりました。遺言書がなかったため、相続人は遺産分割協議による遺産の取得を図ります。 しかし、相続人の1人が行方不明でかつ、住所登録も最後の住所地で職権抹消となっていました。これでは、不動産を共有名義として相続登記できても売却ができません。 そこで、申立人Aは行方不明の相続人Bの捜索が困難と判断し、不在者財産管理人の選任の申し立て・権限外行為許可の申立てを実行に移します。 【解決】 家庭裁判所から行方不明のBを代理人する不在者財産管理人が選任されます。 不動産を相続する申立人Aが行方不明となったBに対して、当人の法定相続分に該当する代償金の支払いを条件に、遺産分割を行いました。 相続手続きは円滑に進み、申立人Aは無事に相続した不動産を売却できました。
行方不明の相続人が見つかった後の手続き
行方不明の相続人が見つかった場合、不在者財産管理人を選任して遺産分割協議が行われたか、失踪宣告を申し立てたかで相続手続きは異なります。 不在者財産管理人と共に行った遺産分割協議は、行方不明の相続人が生存していることを前提に進められるので、その際に取り決めた遺産分割の内容は有効です。 一方、失踪宣告の申し立ては行方不明の相続人が死亡したことを前提に進めます。失踪者の生存または失踪宣告の死亡日と異なる日に死亡していた事実が判明した場合、行方不明だった本人や利害関係者が失踪宣告の取消請求を行えます。 ただし、既に相続手続きが終わり、他の相続人が分割・消費してしまった財産は取り戻せないので注意しましょう。
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