【サッカー】大阪屈指の強豪・履正社高校の攻撃力の秘訣とは。「2人組で崩す判断」と、"数的優位"への導き方を強豪から学ぶ
相手が食いついてこない場合は、前向きでボールを受けながら、3人目の飛び出しを呼び込むのが、次善の策になる。ただし、そこに固執してはいけない。3人目の動きは重要だが、1人で前進できるなら1人でいく、2人で前進できるなら2人でいくなど、最小単位でゴールに近づける方法を選んでほしい。 大切なのは、一言で言うと、数的優位をつくることだが、そのための判断基準として覚えておきたいのが、トライアングルの動きである(図7)。ボールを持っているAのフォローとしては、斜め後方に入るのが正解(図7のB)。全方向を見ることができるBは、Dへの縦パスとサイドにいるCへの展開を選ぶことができる。 Cへの展開を選んだ場合(図7の1)、Cに対し、Dが流れてパスを受けると、中央にスペースが生まれる(図7の2と3)。そこをAまたはBが使えば(図7の4)、スムーズに前進できる。その際、パスを出したCは、Dのフォローに入るべきか、それとも守備のバランスをとるべきか、それは、ピッチの状況を見た上で、判断しなければならない。 ボールを持っているときの優先順位の判断やボールを持っていないときの優先順位の判断は、いわゆる個人戦術の部分だが、そこをきちんとできるようにしたい。 「今の子たちはヨーロッパの試合をよく見ているので、人の動き方やボールの動かし方については、よくわかっています。そこから発展する形で、どうして、その動きをするのかまで理解できると、サッカーIQが上がって、良い判断ができるようになります。 マンチェスター・シティ(イングランド)は、みんなの個の力がベースにあって、その上で、チームとしての仕組みによって、相手の守備を崩すわけです。そうなると、相手としては、手をつけられません。個人戦術を理解していないうちから、グループでの崩しばかりを教えると、判断がなくなり、相手に対応された際に攻め手がなくなります」 サッカーは、シンプルな競技である。難しく考えがちだが、勝つために、ゴールに向かってプレーするだけなのだ。ゴールを奪うために、高い技術と優れた判断を試合で発揮できる選手を育成することが求められている。 指導者PROFILE 平野直樹(ひらの・なおき) 1965年11月2日生まれ、三重県出身。現役時代のポジションはFWで、四日市中央工業高校から順天堂大学に進んだあと、松下電器とガンバ大阪でプレーした。引退後の93年にG大阪のアカデミーで指導者になり、99年にベガルタ仙台のトップチームを指揮した経験も持つ。履正社高校(大阪府)サッカー部の創部に伴い、2003年から監督として同部を指導。これまで、全国高校総体と全国高校サッカー選手権大会に4回ずつ出場している。FW林大地(ガンバ大阪)、MF田中駿汰(セレッソ大阪)、FW町野修斗(ホルシュタイン・キール=ドイツ)らを教え子に持つ
サッカークリニック編集部