“専属広報”のネタバレで窮地の斎藤知事、たとえ逃げ切れても「残される“2つの疑念”」 しかし「公職選挙法違反」疑惑自体は、ほぼ“ノーダメージ”で終結?
・今回の選挙では(公表されている案件以外の)報酬は得ていないが、別のところで見返りがある ・今回の選挙で、表に出ていない対価、あるいは見返りがある 人々がそれを信じるかはさておき、①であれば、問題はないだろう。③であれば問題であり、発覚すれば、失職につながる可能性もあるだろう。 筆者としては、②の可能性は高いように思う。過去に便宜を図ってもらった恩義や、今後の利益への期待から、安値で仕事を受けることは、さほど珍しいことではない。
筆者が勤務していた広告会社は、上場以降は厳しくなったが、非上場会社だった時代は、予算が足りないときに、「来期にまとまった仕事をお願いするから……」「(これまでいろいろ仕事発注してきたから)今回はこの金額でお願いできない?」といったやり取りをすることもあった。さすがに無償というのはなかったが――。 ■期待は「絵に描いた餅」で終わってしまう メルチュ社長の折田氏は、過去に委員報酬で兵庫県から15万円の報酬を受け取っていたと報道されている。ただ、これだけだったとすると、選挙運動の支援の見返りとしては十分とは言いがたい。
もちろん、兵庫県から直接支払われていなくとも、孫請け等の形で間接的に業務を受注している可能性はあるが。 また、メルチュ社には、斎藤氏が知事に返り咲いた暁には、兵庫県関連のPR業務を受注できるのでは――という期待があったのかもしれないし、あくまでも邪推だが、もしかすると、そういう口約束が交わされていたかもしれない。 同社は、過去に自治体(ただし兵庫県ではない)のSNSの運用等の業務で、1000万を超える受注をしていたとの報道がある。今後、この規模での受注が見込めるのであれば、無償で斎藤知事の選挙運動を支援したとしても不思議はない。
ただし、もしも今後そのような受発注があれば、激しい批判を浴びることになる。結局、上記のような期待は「絵に描いた餅」で終わってしまうのだろう。 話は少し変わるが、折田氏が公開した情報では、公示前の10月1日から「支援活動」が開始されているようだ。この時点では、斎藤氏に逆風が吹いている状況で、再選の見込みは薄かった。 それを考えると、「今後の見返りを期待して無償で支援活動を行った」という説明も、少々苦しいだろう。
本件に関して、斎藤知事は逃げ切れるように思えるのだが、それでも疑念は残され続けてしまうというのが実態だ。
西山 守 : マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授