なぜ「親の会社を継ぐ」ことは難しいのか…「現場からのやっかみ」だけでなく「子どもへの愛情」がギャップを広げる原因にも
中小零細の廃業は大手企業の衰退に
事業承継には「長期的な視点での経営」や「価値観の一体化」など、メリットもたくさんある。決して親から子への事業承継を否定しているわけではない。 筆者の経験上、小さな会社を家族で経営する際に重要だと痛感するのは、子が事業を承継すると決まった際、いかに親が一歩身を引けるか、ということだ。 詳細は今後少しずつ紹介していこうと思うが、留学を取りやめ、父が倒れた翌日から工場で働くことになった筆者には、両親の存在は必須であったと同時に、多くの障壁にもなった。 親と子における経営方針の違いから不仲になってしまったケースも多く見てきた。 帝国データバンクの調査によると、2024年の後継者不在率は52.1%。事業承継に関する相談窓口が全国に普及し、各種の支援策も拡充されたことで、調査開始以降最低値となったという。 日本のものづくりの現場を支えているのは、大手企業に連なる独自の技術をもった多くの中小企業だ。 昨今、日本の大手メーカーが海外企業に買収されるケースが後を絶たないが、「日本のものづくり力」という観点からも、こうした跡継ぎや人手不足が原因で廃業を検討する会社の救済が大事になるのではないだろうか。 橋本愛喜(はしもと・あいき) フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA) デイリー新潮編集部
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