マイワシ過剰漁獲に突入 中国・ロシアの増産響き、持続的水準を2倍超過
近年、資源が回復傾向にあり、日本の水揚量も増加しているマイワシ。このうち太平洋に分布する資源が、ロシアや中国の漁獲量拡大により過剰漁獲状態に陥っていることが、国立研究開発法人水産研究・教育機構(水研機構)による最新の資源評価で分かった。日本は漁獲可能量(TAC)を定めて法的に漁獲量を制限しているが、国際的な規制については公海域での漁船数の増加を防止するにとどまっており、資源の将来が危ぶまれる。
日本近海のマイワシは九州から北海道の太平洋沿岸、瀬戸内海に分布する「太平洋系群」、東シナ海や日本海などの「対馬暖流系群」に資源が分けられる。太平洋系群の推定資源量は1980年代に1000万トンを超えていたが、環境の変化から1993年に247万トンにまで減少。以降も資源のパイが縮小したにもかかわらず、十分な漁獲抑制が及ばなかったことから2008年には推定資源量は10万トン台を割り込んだ。その後は、漁獲可能量(TAC)の制限が進み、2010年代から資源の回復傾向に入っている。2023年の日本による同系群の漁獲量は58万トンだった。
一方、2000年代までほとんど漁獲がなかった中国とロシアによる漁獲が近年急増。千島列島や北方領土の沖合を中心としたロシア排他的経済水域(EEZ)や公海域での操業が確認されるようになった。2023年はロシアが54万トン、中国が23万トンを漁獲し、日本を含めた3カ国で135万トンを水揚げした計算になる。
水研機構はこの数字を基に3カ国の漁獲圧(漁獲の強さ)が、持続的な漁獲が続けられる量の2倍以上に達したと推定。また、今年の産卵量は大きく減少したことが確認され、資源量は2023年の426万トンから、2025年には268万トンにまで減ると試算し、「今後の資源動向に注意を要する」とコメントする。
マイワシは数年先まで漁獲可能量(TAC)が設定されており、これに従うことで2030年代前半までは年間60万~70万トン台で総漁獲を安定させられると水研機構は試算する。しかし、地球温暖化に伴う海水温の変化により、分布域がさらに北上する可能性がある。日本の沿岸に多く生息してきたマイワシが公海域やロシアEEZ内へ生息域をシフトするようになれば、日本だけの取り組みでは資源を管理するのは困難となる。ロシアは現在、同系群について独自に漁獲勧告量を定めているが、国同士が連携して資源を管理する仕組みはない。過剰漁獲の継続による資源の減退が現実味を帯びている。
マイワシは鮮魚や缶詰、煮干しなどの食用の他、近年は世界的な養殖事業の拡大を受け、養殖魚の餌となる魚粉加工としての需要が高まっている。