人が苦手で断り下手は大人の発達障害「ASD(自閉スペクトラム症)」受動群かも!?【40代50代・「大人の発達障害」を理解する③】
ASD受動群タイプの困りごと、どう対応すればいい?
【周りのサポート】 「例えば、飲み会や食事に誘うのはいいのですが(たまには誘ってほしいという人もいます)、強引ではなく、『飲みに行くけれど、どうする?』『もしよかったら行かない?』というように、断れる雰囲気を残してあげることが大切です。 何かを頼むときには、言葉で言うよりも、目で見る情報のほうが伝わりやすいので、文字に書いて渡す(メールで伝える)のがベター。さらに『これ、お願いしても大丈夫?』『大変だったら言ってね』など、気遣う言葉を添えるといいでしょう」 【当事者へのアドバイス】 「こうした状況を上手に乗り越えるには、例えば、職場の飲み会やママ友との食事会などでは、『私はおしゃべりが得意ではないのですが、皆さんのお話を聞いているのが楽しいです』などと説明し、徹底して聞き役に回る方法があります。 無理をして話をしなくても、周囲に『あまりしゃべらない人』だとわかってもらえば、気が楽になるのではないでしょうか? また、会議など苦手なディスカッションをしなければならない場で、どうにも頭がフリーズしてしまうようなら、『私はASDの傾向があり、ディスカッションが苦手なんです』と上司などにカミングアウトして配慮してもらう方法もあります。 頼まれると断れない人は、もしかしたら子どもの頃から、親や先生、友達の言うことを黙って聞いていたかもしれませんね。嫌という自分の気持ちが言葉で伝えられないだけでなく、表情やしぐさでも表せない人もいます。 そんな場合は、日頃から断る練習をしておくといいですね。『今日はどうしても外せない用事があるので、明日でもいいでしょうか?』『仕事が忙しいので、それは引き受けられませんが、〇〇ならできるかもしれません』など、断る文言を事前に何通りか考えておきます。そして、それを声に出して練習しておくことが大事です。 また、強引なセールスやお店の販売員などに物をすすめられた場合、即決しない練習をします。『考えさせてください』と、これも声に出して練習して、どんなときでも必ず一度家に帰って考え直すこと、または誰かに相談する癖をつけましょう」
【教えてくれたのは】 司馬理英子さん 医学博士。司馬クリニック院長。岡山大学医学部・同大学院卒業後、1983年渡米。アメリカで4人の子どもを育てながら、ADHDについて研鑽を深め、1997年に帰国後、東京都武蔵野市に発達障害専門のクリニック「司馬クリニック」を開院。著書は『のび太・ジャイアン症候群』(主婦の友社)をはじめ、『わたし、ADHDガール。恋と仕事で困ってます』(東洋館出版社)、近著『もしかして発達障害?「うまくいかない」がラクになる』(主婦の友社)など、多数。 イラスト/小迎裕美子 取材・原文/山村浩子