林 咲希「あきらめずに戦えた。それが今の自分の誇り」
女子バスケット代表は世界最終予選で勝利。パリ・オリンピックの出場権を手中に収めた。キャプテンである彼女が抱き続けた思いとは。(雑誌『ターザン』の人気連載「Here Comes Tarzan」No.877(2024年4月4日発売〉より全文掲載) [画像]林 咲希選手
ワンポゼッションが命取りになるプレイもある。明確に話し合えたのがよかった
「ここをドリブルで走り抜けてシュートして」。 カメラマンの指示に、「はいっ」と返事をして、指示通りの動きをやってみせる。ここは林咲希が所属する〈富士通レッドウェーブ〉の体育館。林は自主練習を終えたばかり。 疲れているのに、イヤな顔ひとつせず撮影に応じてくれる。3ポイントを次々と決める彼女を見て、「よく入りますね」と失礼なことを言うスタッフにも「練習ですから」と瞬時に返す。ここで入らなかったら試合じゃとても、ということなのだろう。 爽やかで聡明、そしてバスケットボールが好きでたまらない。彼女の動きや言葉からそれが伝わってくる。 今年2月8日からハンガリーで行われたバスケットボールのFIBA女子オリンピック世界最終予選。林は日本代表のキャプテンを務めた。この大会にはスペイン、ハンガリー、カナダ、そして日本の4か国が出場して、上位3位までがオリンピック出場権を得る。結果から言うと、日本は2勝1敗で1位となったのだが、初戦であるスペイン戦の直前、林はどのような思いを抱いていたのか。 「東京オリンピックで銀メダルを獲ったことに泥を塗ってはいけない。絶対に出場権を得たいと思っていました。今回の代表には新たなメンバーが4人入ってきたから、キャプテンとしてチームをまとめていかなきゃいけなかった。自分のプラス思考であったり、泥臭い仕事をどんどんやるとか、そういうところが買われていた部分もあるので、そこは先頭切ってやってきたつもりでした」 その結果が試される。だが、初戦前の林の心境は実に穏やかだった。 「個人的にはスペインと戦ったことがなかったので楽しみでした。私のプレイを知らないから、多分(ディフェンスに隙間が)空くだろうと思っていました。そしたら試合では実際に空いたんですけど(笑)。こんな感じでリラックスはしていたんですが、初戦が大事だっていうことは、チームの全員が共有してました」