9月の日銀会合 「総括的検証」でマイナス金利の深堀りはあるのか?
日銀金融政策決定会合が20~21日に行われます。7月の会合後の黒田日銀総裁の記者会見において、9月の会合時にマイナス金利等これまでの政策の「総括的検証」がなされることで注目されています。総括的検証はどのようなの内容なって、それを受けた会合結果はどうなると予想されるのでしょうか?第一生命経済研究所の藤代宏一さんが解説します。 ------------------- 8月22日付の当記事(黒田総裁は何を指示したのか “意味深な一文“から日銀の思惑を読み解く)でも指摘したとおり、筆者は日銀9月会合が単にイールド・カーブ(国債の年限ごとの利回り)のスティープ化(≒長短金利差が拡大方向へ)を促すための技術的な調整に終わり、実質的にゼロ回答になると予想してきましたが、最近はその予想に自信を深めています。
「総括的検証」はどのような内容になるのか?
9月会合時に発表される「総括的検証」では、マイナス金利と国債買い入れの組み合わせが想定以上の名目金利低下につながったとの分析が示され、デュレーションの短期化(買い入れる国債の平均残存期間を短くする)の必要性が議論されるでしょう。 それゆえ、現時点で予想される政策変更はデュレーションの実質的な短期化のみ、市場で質的緩和の段階的縮小とみなされることを防止する観点からデュレーションの上限を12年で据え置く一方、下限を3年まで短縮すると予想します。新たなデュレーションは3年~12年程度になります(現行7年~12年)。なお、黒田総裁は「4次元」もありうるとしていましたが、少なくとも今回の会合でそれが俎上に上がることはないでしょう。 筆者は7月29日に日銀がETF単独の追加緩和を選択したことを重視して、従前から実質ゼロ回答の予想を示してきましたが、5日の黒田総裁、8日の中曽副総裁の講演を受けてますますその自信を深めています。日銀は7月29日の時点ですでに長期および超長期ゾーンの金利低下が行き過ぎているとの認識を持っていた可能性が高く、それゆえ、ETF単独の追加緩和を決定したとみられます。この見方が正しければ、今後も名目金利に下押し圧力を加える政策の採用は見込まれません。そうしたなかで5日の黒田総裁講演は(超)長期金利の低下について、その弊害が初めて言及されたという点で非常に示唆に富んでいました。