女子大の「リーダーシップ教育」就活でどう影響? 「採用担当者の目に留まることが多い」
下級生のロールモデルに
同プログラムで欠かせないのが、「LA (エルエー)」と呼ばれる学習アシスタントの存在です。LAは前年度の受講生の中で立候補した上級生が務めます。教壇に立って授業を進行し、グループワークに介入するなど、授業運営の主要部分を担います。 例えば、LAはグループワークのメンバー構成を決定する役割を担いますが、そのためには各受講生の特性を見定め、チームのバランスを想像することが不可欠です。また、説明の仕方を工夫したり、話し合いが難航した際には受講生が自ら動き出せるよう支援したりします。佐伯教授は「LAはこの授業で最も重要」と言います。 「LAと教員は『受講生の学びを最大化する』という目標を達成するためのチームで、授業後には合同で振り返りを実施します。しかし教員は常に、LA自身がリーダーシップを発揮するための支援役に徹します。これによってLAは下級生のロールモデルとして機能するようになり、全体のリーダーシップのレベルが底上げされていきます」 リーダーシップ・プログラムで身につけた力は、就職活動にもつながり始めているようです。佐伯教授は「チーム活動における自分の強みをエピソードとともに理解できていれば、3年生になって就職活動のためにあわてて自己分析をする必要もなくなる」と続けます。 「就職活動時、グループ討論選考の振り返りでは、多くの学生が自分の貢献について話します。しかし本プログラムの受講生はチームとしての活動に着目し、『メンバー全員の貢献』について話すため、採用担当者の目に留まることが多いようです。自然体で、かつチームを生かすための『自分なりのリーダーシップ』を発揮する様子は、企業からも評価されるのではないでしょうか」
仕事への関心が広がる
キャリアセンター長の森本教授も、次のように続けます。 「リーダーシップやチームワークを学ぶことが、学生たちの関心の幅を広げていると感じます。何となくサービス業界を志望していたような学生が、顧客と自分という視点に留まらず、組織全体に目が向くようになったり、職種として人事に興味を持つ学生が増えたりしているようです。プログラムを通じてチームを生かす力を身につけ、それをきちんとアピールできる学生が、入試の偏差値帯だけで見ると入社が難しいような企業から内定を得る事例も見られるようになりました。プログラムの内容も、企業へのアピールも、さらに力を入れていきたいと考えています」 新たな働き方やリーダー像が求められる現在、女子大での知見を生かした学びのニーズも高まっています。お茶の水女子大学は15年度に独自のリーダー育成研究機構を設置。また共立女子大学は22年度にやはり教育センターを設立し、学園全体で「リーダーシップの共立」という方針を打ち出しています。 佐伯教授は「特に『男子がいると自分の素を出せない』という女子学生にとっては、自分が女性であることを意識せずにいられる環境でリーダーシップを学ぶメリットが大きい」と言います。 リーダーシップを学ぶことが就活での成果につながるのは、それが自分を見つめ直すことにほかならないからです。内定のためだけではなく、実社会で役立つチームワーク力も鍛えられるのでしょう。
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