女子大の「リーダーシップ教育」就活でどう影響? 「採用担当者の目に留まることが多い」
「リーダーシップ教育」に力を入れる大学が増えています。リーダーシップとは、「先頭に立って集団を引っ張ること」だけを指す言葉ではありません。個々のリーダーシップを磨くことで、就職活動にもいい影響が出ているようです。様々な女子大で、リーダーとして活躍する学生を育てようという動きが強まっていて、教育プログラムが導入されています。いまの時代に求められるリーダーシップとは、どんなものなのでしょうか。 【写真】受講生からLAへのメッセージ。先輩に憧れて次年度のLAになる例がとても多い
甲南女子大学で2017年にスタートしたリーダーシップ・プログラムのポイントは、「全員発揮型」。手本にしたのは、立教大学経営学部のプログラム※でした。この授業の立ち上げを担った教務部長で人間科学部の佐伯勇教授はこう語ります。 「リーダーシップはチームを引っ張る人だけのものではない、という立教大プログラムの考え方を、本学でもぜひ取り入れたいと考えました。リーダーシップとは、チームの目標達成のためにほかのメンバーに与える影響力という考え方が広まりつつあります。つまり、全員が発揮すべきもので、10人いれば10通りのリーダーシップの形があります」 ※立教大学独自のリーダーシップ開発プログラム「ビジネス・リーダーシップ・プログラム」(通称:BLP)。受講生全員のリーダーシップ開発を目指すことが特徴
学生同士でフィードバック
「ほかのメンバーに与える影響力」がリーダーシップだと定義すれば、自分のリーダーシップを自分で理解するのは難しいことが想像できるでしょう。授業ではどんな学びを促しているのか、過去の事例を参考に見てみましょう。 ::::::::::::::::::::::::::::::: Aさんは甲南女子大学の1年生です。リーダーになる自信はありませんが、それはほかの大半の受講生も同じです。一方で、チームを引っ張ることこそが重要だと考える学生も少数存在します。4、5人に分かれて行うプロジェクトのグループワークは、自然とそうした学生が主導する形になり、Aさんのグループでも積極的なBさんが場を仕切っています。やや強引に話し合いを進めるBさんのペースに、次第にチームはギスギスしてきてしまいました。 こうした場面で生きてくるのが、同プログラムの特徴である振り返りと学生同士のフィードバックです。同プログラムでは、プロジェクトの途中や最後に、必ずこの機会をつくります。 Aさんには、メンバーから「発言を笑顔で肯定してくれて勇気づけられた」というフィードバックがありました。自分には特徴がないと思っていたAさんですが、無意識の行動がすでにリーダーシップにつながっているとわかって自信がつきました。また、「いいアイデアを持っているのでもっと聞かせてほしい」という声もあり、「自分の意見を言っていいんだ」と感じるようになりました。 理想の高いBさんは、最もチームに貢献しているという自負があり、チームのすべてをコントロールしようとしていました。「先頭を切って意見を言ってくれて、時間を効率的に使えた」といううれしいフィードバックがあった一方で、衝撃的だったのは「ほかの人の意見に否定的に反応するので発言しづらくなった」という声です。「意見を言わないのはその人の問題だ」と思っていたBさんですが、「自分の言動が意図しない影響を与えている」と知ったのは初めてでした。まずは全員の意見を引き出して肯定することを心がけるようになりました。 その後のグループワークでは、メンバーの発言量のバランスもよくなり、それぞれの主体的な行動も増加。Bさんも以前よりリラックスして取り組めるようになりました。 ::::::::::::::::::::::::::::::: 「場を引っ張る学生は責任感が強く、個人では高い成果を出す傾向にあります。しかし、よかれと思ってやっているのに、チームではうまく回らないのはなぜなのか。それを考えるきっかけとなるのが他者からのフィードバックです。大切なのは相手を否定するのではなく、『意図しない影響を与えている』と伝えること。こうした過程を経て、彼女たちはほかの学生を信頼して任せることや、相手のペースに合わせることも覚えていきます。メンバー全員が状況に応じて自己調整をするようになった結果、それぞれが持ち味を発揮し、力を引き出し合うことができるようになるのです」(佐伯教授) キャリアセンター長を務める森本真理・国際学部教授は、自身の海外経験を振り返りながらこう言います。 「国際ビジネスの世界も含め、海外では意見を述べることそのものに価値があります。しかし日本の学生は、その意見が正しいかどうかを考えて黙ってしまいがちです。自分が考えていることを相手に伝えるのは、社会に出たら必ず必要な力。このプログラムでは、学生がそうした大切な力を伸ばしていると実感しています」