中東の航空会社がこぞって「欧州サッカーチーム」のスポンサーになっている根本理由
サッカー戦略で観光客増加
中東の航空会社や政府の取り組みを受け、他の地域の航空会社や政府も同様の戦略を取るようになっている。 例えば、ルワンダ政府の観光キャンペーン「Visit Rwanda」は、バイエルン・ミュンヘン、アーセナル、パリ・サンジェルマンといったビッグクラブで実施されている。2018年にアーセナルで実施した際、ルワンダへの旅行者数が前年比で5%増加し、投資額をわずか1年で回収する効果を上げた。 日本では、JALがイングランドの名門リバプールFCのオフィシャルスポンサーとなっている。JALはマイル会員向けに観戦チケットをプレゼントするキャンペーンを行ったり、リバプールFCの本拠地アンフィールドに「JAPAN AIRLINES LOUNGE」を設けたりしている。また、米国ツアー中にはユース世代向けのサッカークリニックも開催し、リバプールFCの活動に積極的に関わっている。 さらに、JALは国内でも清水エスパルスやコンサドーレ札幌など、いくつかのクラブのスポンサーを務めており、その影響力は国内外に広がっている。サッカーを通じて、 「どれだけ多くの国内外のファンにアピールできるか」 が注目されている。
航空会社の政治リスク、クラブに痛手
航空会社は経済や世界情勢の影響を受けやすく、ときにはサッカークラブに 「予期しない損失」 をもたらすことがある。例えば、マンチェスター・ユナイテッドは2017年にロシアのアエロフロートとスポンサー契約を結び、2023年までの6年間で約4000万ポンド(当時のレートで約61億円)の契約を締結していた。 この契約額は、アトレティコ・マドリードとリヤド航空の契約とほぼ同じ規模で、年数に違いがあるものの(リヤド航空の契約は2024年から2027年まで)、かなりの大型契約だった。 しかし、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻により状況は一変。マンチェスター・ユナイテッドの株価は侵攻後、約2週間で7%も下落し、クラブは契約を途中で破棄せざるを得なくなった。その結果、約12億円の損失を被ることとなった。 航空会社は、依然として本拠地を置く国や地域の象徴と見なされることが多いため、カントリーリスクが問題となるケースもある。