中東の航空会社がこぞって「欧州サッカーチーム」のスポンサーになっている根本理由
スタジアム命名権もクラブの収入源
選手の移籍金や給与で膨大な金額が動く欧州のサッカークラブにとって、中東の航空会社からの巨額なスポンサー料は重要な財源となっている。 特にアトレティコ・マドリードにとって、リヤド航空からのスポンサー料は大きな意味を持つ。同クラブは2019年に新スタジアム「メトロポリターノ」を開設し、中国企業とのスポンサー契約の不振も影響して、バルセロナやレアル・マドリードと比較して資金面で不利な立場にあった。 しかし、2024年にはリヤド航空からの大規模なスポンサー料が後押しとなり、アルゼンチン代表のフリアン・アルバレス選手やイングランド代表のコナー・ギャラガー選手を獲得するなど、大型補強に成功した。 また、イングランドやスペインの多くのクラブではスタジアムを自ら所有しているため、ネーミングライツによる収益もクラブの収入となる。このため、アーセナルやマンチェスター・シティはユニホームスポンサーだけでなく、スタジアムの命名権からも収益を上げている。
サッカーでブランド強化
航空会社にとって、世界中にファンを持つ欧州のサッカークラブと提携することで、ブランドの認知度を大きく高めることができる。特に中東の航空会社にとって、欧州市場は重要であり、ドバイやアブダビ、ドーハからの乗り継ぎ需要を拡大するためには、欧州でのプレゼンスを強化することが不可欠だ。 しかし、2000年代のテロ事件が影響し、アラブ諸国のイメージは悪化し、ビジネスにも影響を及ぼした。例えば、UAEの公営企業が米国の港湾運営権を買収しようとした際、米国大統領の賛成を得ていたにもかかわらず、安全保障上の懸念から議会の反対を受け、最終的に断念した。このような背景から、 「欧米諸国の世論を味方につける」 ことが重要になり、スポーツインフラへの投資が活発になった。その一環として、航空会社とサッカークラブは単なるユニホームスポンサーシップにとどまらず、共同で大規模なキャンペーンを展開するようになった。 例えば、エミレーツ航空はアーセナルのサポーター向けに「グローバル・ガナーズ」キャンペーンを実施し、無料の航空券や観戦チケットを提供する抽選会を行った。このようなアクションで、アーセナルの世界中のファンにアピールすることに成功している。 さらに、航空会社だけでなく、就航している国や地域にとっても、ブランド力のあるサッカーチームとの提携は大きな意味を持つ。例えば、レアル・マドリードはドバイ政府の観光キャンペーン「Visit Dubai」のスポンサーとなり、ドバイを「オフィシャル・ディスティネーション」として宣伝している。 さらに、同クラブの本拠地スタジアムで「Visit Dubai」の看板を掲げるとともに、ドバイにレアル・マドリードのテーマパークを開業する計画も発表しており、双方にとって重要なビジネス関係となっている。