「殿とはいつからなの?」正妻からの唐突な発言に震えが止まらない|『光る君へ』第47回
再会に新しい人生の予感を漂わせたのもつかの間。周明を失ったまひろは、見たこともないような憔悴ぶりを見せる。 【画像】残るは最終回。なのに、まさかのラストに戦慄! まひろの人生が揺さぶられる。
周明となぜ再会したのか
万が一、周明(松下洸平)が生きている可能性もあるのではないか、と思ったがそんな都合のいい話ではなった。 乙丸(矢部太郎)に引きずられるようにして、その場を離れることになったまひろ(吉高由里子)。周明の死を目の当たりにして、憔悴した様子を見せる。 これまで、どんなときでも前を向いていたまひろだが、今回はその表情に覇気が全くと言っていいほどない。 これまでは、彼女自身が自分の人生に少なからず希望を持っていた。そして、若かった。 初めて、生きていく道に迷い、もう自分にできることはないのではないか、と視線が下を向いているときに、直面した死。それも、少なからず、心を通じ合わせた人の死。その心中は想像に難くない。 それにしても、どうして、周明は再び登場したのだろう、と考えずにはいられない。 物語のクライマックスを盛り上げるため、だろうか。確かに盛り上がったけれど、個人的に思ったのは、周明はまひろのもうひとつの道だったのではないかということだ。 まひろは京に戻り、宣孝と結婚し、そして『源氏物語』を書いた。 しかし、宣孝の結婚の申し込みを断っていたとしたら? もっと早くに周明と再会していたとしたら? 『源氏物語』は生まれなかったかもしれないけれど、まひろは女性としてはまた違う道を歩んでいたのではないか。 史実として、『源氏物語』が生まれないというストーリーには成り得ないわけだけれど、まひろの選択がもし違っていたとしたら……と少し想像してしまった。
友情は不滅、だけれど
異国の海賊からの攻撃を受けていたころ、朝廷は何をしていたのか。 何もしていなかった。 隆家(竜星涼)が文を出していたが、摂政・頼通(渡邊圭祐)は動かなかった。前例のないこと、賊も京までは来ないだろう、という見立てだ。だから太閤である道長(柄本佑)にも報告していなかった。 隆家はそんな朝廷の動きを見越していたのかもしれない。実資(秋山竜次)のもとにも文が届いていた。道長は実資からその報告を聞き、顔色を変える。当然だ。まひろが大宰府にいるのだから。 道長は、頼通に守りを固めるように伝えるが、頼通は聞き入れない。摂政は自分であるし、もう道長は政から退いている。前例がないことなのだから、道長の選択だって正しいとは限らない。しかし、なんだって、最初は前例がないんだから……と思ってしまう。 結局、朝廷の助けなしに隆家たちは海賊を退けたわけだが、まともな褒章もなかった。 朝廷に知らせが届く前の戦いであり、それならば私闘である、というのだ。 そんなバカな。それも、その発言をしたのが公任(町田啓太)、行成(渡辺大知)も賛同する。そのことにも少しショックを受けてしまったのだが、すぐに理由は分かった。 いま、道長たちの脅威になるとしたら隆家。だから、隆家の手柄になるようなことを認めるべきではない、と公任たちは考えたのだ。 そう、友のためにやったことだった。 しかし、当の道長はまひろを心配していたし、まひろを助けた(結果的には、だけれど)隆家に感謝の気持ちさえあるかもしれない。 珍しく公任が道長に「お前のためにやったのに」と感情をあらわにするが、だからと言って、2人の絆が断たれるわけではない。ただ、寂しさがあるのも間違いなくて……。年を重ねてからの友情の難しさ、その一方で、朝廷でのことしか見えていない視野の狭さというのも感じられる。