年末年始の団らん〝当たり前〟じゃない子どもも 長期入院する小児病棟の大みそかや正月の様子、医師に聞く
「長い連休、実は厳しい」医療体制
大学病院には、年間に発症する人が国内でも数十人しかいないような病気の患者が集まる傾向にあり、スペシャリストでなければ治療できない疾患が多いといいます。そのため、例えば新生児、血液、アレルギー……というように、小児科の中にも専門ごとにグループがあるそうです。 スタッフ全体の数はある程度、確保できていても、各グループの医師は3、4人になるので、当直勤務の割り当ても含めて、9連休の今年であれば4~5日は出勤している、ということでした。 さらに、西田さんはここ10年ほど、大みそかに「外勤」と呼ばれる、勤務先の病院と提携している小児科医が少ない地域の診療所に行き、救急外来を受け持つことを続けているそうです。 「人手が足りない医療施設というのはやはりありますし、そういうところを手伝うのも、あくまで群馬の場合ですが、大学病院の大事な役割です。他にも、重度心身障害者の施設などの提携先で勤務する医師もいるので、年末年始は関係ない人の方が多いと思います」 毎年、大みそかに外勤をする西田さんは、1日から病棟勤務をする年もあったそうで、年越しは「一時的な休息という感じ」。例年、31日は1日中診察をしてから帰宅すると話します。その忙しさは、紅白歌合戦を「帰りの車の中でラジオで聴いた年もあった」ほど。 自分も家族とは過ごせないものの、家族は「大事な仕事だから」と理解してくれているそうです。 また、病院全体としては休むスタッフも多くなる年末年始には「検査体制などが弱くなってしまう」という事情もある、と西田さん。 「今年は9連休で、我々からすると受け入れの体制が十分ではない状況とも言えます。ですので、このタイミングでひどい症状の人が入院してしまうと、より専門的な検査ができないとか、そういう状況への不安がある。実は連休が長いと、厳しいんです」(西田さん) 大津さんも「連休が長引いたときに来院される患者さんは、とことん重症になってから来る人が多い」と話します。 「世の中の機能と連動して、かかりつけのクリニックや一般病院がほとんどストップしているので、調子が悪くても自宅で様子を見ていたり、休日診療でなかなか診てもらえなかったりするためです」(大津さん) だからこそ「世の中が休みのときこそ、私たちはしっかりしなくちゃいけない」と、大津さんは覚悟をのぞかせます。