NEC、2024年度上期決算は実質的な増収増益--グループ再編の大きな動き
今回の決算で注目しておきたいのが、5月30日に発表した新たな価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」である。 発表では、これまで「NEC Digital Platform」と呼んでいた「BluStellar商材」の受注が前年同期比40%増の大幅成長になった。森田氏は「エンタープライズだけでなく、パブリックの大型案件も加わり、大きく成長した」と説明し、「エンタープライズで業種特化の価値創造シナリオを提供しているが、パブリック向けにも業種特化のシナリオの拡充を進めている。AIやセキュリティ商材を活用した高収益案件が拡大しており、売上成長だけでなく収益性の改善も図られている」と語った。 BluStellarは、2024年度計画において、売上収益で前年比13.5%増の4265億円を掲げる。そのうちBluStellar商材で前年比21.4%増の2745億円を見込んでいるが、上期実績の成長率はそれを大きく上回るものだ。「BluStellarの上期売上収益は前年同期比3割増」(藤川氏)と、ここでも好調ぶりが裏付けられた。 また、調整後営業利益率は、2023年度の6.0%から2024年度は7.9%にまで引き上げる計画で、これも順調に推移しているようだ。藤川氏は、「BluStellarの収益性をさらに高めていける」と自信を見せる。 NECは、決算発表と併せて、NECネッツエスアイに対する株式の公開買付けも発表した。NECは、NECネッツエスアイに対して51.36%の出資比率を持つが、公開買付けにより100%子会社化する。買収費用で2355億円を見込んでいる。 森田氏は、「これによりグループの力を発揮できる絵を描けるようになる。グループの力を200%出していきたいが、今回のNECネッツエスアイを中心とした再編はその第一歩にも第二歩にもなる」と位置付けた。 NECは、JAEの非連結化に続き、NECキャピタルソリューションの一部株式をSBI新生銀行に譲渡することも発表。森田氏は、「JAE、NECキャピタルソリューション、NECネッツエスアイの上場3社の方向性を決めることができ、グループの最適化、最大化を推進できる環境が整った」と語り、今回の施策が重要な意味を持つと強調した。 NECは、新設する中間持株会社の「NESICホールディングス(仮称)」の傘下に、NECネッツエスアイと100%子会社のNECネクサソリューションズを配置し、さらに、NECの消防防災事業をNECネッツエスアイに、自治体およびSME(中堅中小企業)向けITサービス事業をNECネクサソリューションズにそれぞれ承継させる。3社の事業再編を実施し、新体制で一体的な事業運営を行うことになる。 森田氏は、「全国の自治体やSMEに対して、ITからネットワークを統合したDXソリューションを提供し、コンサルティングからSI(システムインテグレーション)、工事、保守まで一気通貫で提供できる事業体制を構築できる。これまで工事部門がNECとNECネッエスアイに分散して効率的に対応できていなかったが、100%子会社化によりグループ全体で対応できる」と説明する。 政府の「デジタル田園都市構想」の中では、地方自治体のデジタル標準化が加速するとともに、全国の中堅・中小企業でもDXの取り組みが本格化することが見込まれている。森田氏は、「新体制により工事を含めてエンドツーエンドで対応し、全国規模でデリバリーできるSIerのユニークな強みを生かし、地方に対してもきめ細かく対応できる」と、新体制の強みを示した。 そして、今回の再編により同じ100%子会社でSIerのNECソリューションイノベータや、保守サービスを行うNECフィールディングとの連携により、NECグループとしての価値を最大化するための土台ができ上がり、NECのグループ戦略が新たなフェーズに入る節目が訪れたとも言える。